(第14回)率の弱点 — 割る数 (分母) が小さいと当てにならない

現実を「統計的に理解する」ための初歩の初歩(麻生一枝)| 2020.12.09
私達が生きる現実社会の多くの問題の理解には,種々の数値の測定や観察とそれを「統計的に処理する」作業が欠かせません.毎日のニュースでもありとあらゆる機会に「数値」が出てきますが,その意味をきちんと考えたり信憑性を疑うことは、必ずしもなされていないようです.この連載では,誰でも知っておいてほしい統計についての基本的な考え方や, 統計にまつわる誤解や陥りやすい罠を紹介していきたいと思います.

(毎月中旬更新予定)

率の弱点:司法試験予備試験の大学別合格率を例に

まずは、表を 1 つ見ていただこう。下の表1-1 は、資格 Times というサイトに掲載された令和元年度司法試験予備試験の合格率を、大学別に高いほうから順に並べ直したものだ1)。ご存じの方も多いと思うが、司法試験には、それを受けるための受験資格が要る。その資格を得るための方法の 1 つが、予備試験合格だ。もう 1 つは法科大学院修了である。

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脚注   [ + ]

1. 司法試験の出身大学別合格率は? 合格者数ランキングから大学別合格方法まで紹介 (2020 年 10 月 22 日閲覧) の表の合格率データにもとづき作成。

麻生一枝 成蹊大学非常勤講師.お茶の水女子大学理学部数学科卒業,オレゴン州立大学動物学科卒業,プエルトリコ大学海洋学科修士,ハワイ大学動物学Ph.D. 専門は動物行動生態学.「統計や実験デザインの理解は健全な科学研究に必須である」という信念のもと,これらの教育の普及に熱意を持って取り組む.著訳書に『科学でわかる男と女になるしくみ』 (SBクリエイティブ),『実データで学ぶ,使うための統計入門 ---データの取りかたと見かた』(共訳,日本評論社), 『生命科学の実験デザイン』(共訳,名古屋大学出版会)など.