『金融政策の理論と実践—動学マクロ経済学アプローチ』(著:仲田泰祐)
はしがき
本書の目的と特徴
金融政策に大きな注目が集まっています.
日本では新型コロナ危機をきっかけに,これまで 30 年以上もの長きにわたって続いてきた低インフレ・低金利の時代の幕が閉じ,本書執筆時点ではインフレ率が政策目標率である 2%を上回る水準で推移しています.そして,日本銀行が政策金利を今後どの程度,どのようなペースで引き上げていくかに関心が集まっています.物価・金融政策を決定する日本銀行の動向に関する話題は,毎日のようにニュースで取り上げられています.
本書では,金融政策をより体系的に理解したい方々のために,政策関係者や研究者たちが行う金融政策分析で定着しており,現実の金融政策思想・哲学にも大きな影響を与えてきた動学マクロ経済モデルに基づくさまざまな理論を,政策現場との関係もふまえて実践的に紹介していきます.
筆者は, 2012 年から 2020 年までアメリカの中央銀行制度である FRB (連邦準備制度理事会) のマクロ経済モデル・チームに所属し,さまざまな学術的・実務的な金融政策分析を行ってきました.その経験を通して,理論的な分析が実際の金融政策の意思決定にどのように貢献しているのか,金融政策運営を支配する思想・哲学にどのように影響を与えてきたのかを間近で観察することができました.その経験を活かして,マクロ経済モデルに基づいた理論を紹介するだけでなく,その理論がどのように FRB の政策と関係しているかについても解説します.
この書籍のもととなる『経済セミナー』誌での連載は, 2020 年秋に開始し,途中約 2 年半の休載を経て 2025 年春に完結しました.連載開始時点では,新型コロナ危機の影響でアメリカでの政策金利がゼロであったこともあり, 2010 年代のアメリカでゼロ金利政策が実施されていた時代のみに焦点をあてる予定でした.しかしながら,その後 FRB の課題がポストコロナにおけるインフレ上昇への対応に変わったことをふまえ,当初の予定を変更し,ゼロ金利政策の時代,低金利・低インフレの時代,さらには高インフレの時代の金融政策に含意のあるマクロモデル分析も紹介することにしました.
FRB では経済分析を行う際に動学マクロ経済モデルを頻繁に使用します.本書では,金融政策分析でよく用いられるマクロ経済モデル,そして FRB の金融政策運営の裏付けとなる理論を学ぶだけでなく,モデル分析が実際に政策現場でどのように活用されているかについても詳細にお伝えすることも目的としています.また,公開されている具体的なモデル分析例もいくつか紹介します.金融政策以外にも,数理モデル分析が政策判断の材料になる分野は多々あると思います. FRB における数理モデル活用の実例は,そういった他の政策における数理モデル分析の活用を考える際にも参考としていただけるのではないかと考えています.
目次
- 序 章 理論と政策の交差点
- 第1章 ニューケインジアン・モデルの基礎と応用
- 第2章 ゼロ金利制約下の財政政策
- 第3章 政策金利のフォワードガイダンス (1):最適裁量政策と最適コミットメント政策
- 第4章 政策金利のフォワードガイダンス (2):金融政策ルール
- 第5章 最適コミットメント政策に対する4つの懸念
- 第6章 ゼロ金利制約と不確実性
- 第7章 2019~2020年の戦略レビューと平均インフレ目標枠組みの導入
- 第8章 コロナ危機後のインフレ上昇 (1):コストプッシュ・ショック理論
- 第9章 コロナ危機後のインフレ上昇 (2):インフレ・バイアスの理論
- 終 章 金融政策理論のこれから :今後の展望と政策現場での活用に向けて
書誌情報など
- 『金融政策の理論と実践—動学マクロ経済学アプローチ』
- 著:仲田泰祐
- 紙の書籍
- 定価:税込 3300 円(本体価格 3000 円)
- 発刊年月:2026 年 2 月
- ISBN:978-4-535-54129-0
- 判型:A5 判
- ページ数:260 ページ
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