【対談】生成AIをめぐる競争の本質を問う(経済セミナー2025年8+9月号)

特集から(経済セミナー)| 2025.07.28
経済セミナー』の特集に収録されている対談・鼎談の一部をご紹介します.

(奇数月下旬更新予定)

AI (人工知能) の発展は目覚ましい。特に「生成 AI」は、2022 年の ChatGPT 登場以降、ビジネスや研究になくてはならないツールになりつつある。膨大なデータを資源として投入し、実用化を急速に進めた生成 AI をめぐる企業の競争はどうなるのか? 私たちの社会はどう変わっていくのか? 生成 AI を使いこなすためにはどんなルールが必要なのか? 法学・法律実務と経済学の視点から考える。

1 はじめに

—本日は、各界から熱い視線を浴びる生成 AI 市場と、その発展を支える財としてのデータに焦点を当てて、今後の展望も含めて深掘りしていきたいと思います。まずは自己紹介から、お願いします。

安達 京都大学の安達です。AI というと、2016 年に Google の DeepMind が開発した「アルファ碁」という囲碁の AI プログラムが、囲碁の世界チャンピオンに勝ったニュースが思い出されます。しかし、私が AI に強く関心を持つようになったのは、2022 年末に公開された ChatGPT がきっかけです。実はその直後に同僚の 1 人から「これの登場でレポート評価が難しくなりそうだから注意が必要」という喚起を促す一斉送信メールが送られてきたのですが、教師稼業において、レポートを主たる評価対象とはしてこなかったこともあり、完全にスルーしていました。「自分の人生に関係ないメール来たな」と (笑)。しかし翌年 (2023 年) のゴールデンウィーク頃、ある数値計算ソフトウェアでグラフを描こうとしていて、1 時間ほど悪戦苦闘していたとき、評判になっている ChatGPT を使ってみようかということで、早速アカウントを作成してみました。「これこれのグラフを描きたいのだが、どうすればよいか?」と質問してみたところ、瞬時に的確なコードを示してくれたのです。そこで、「これは使わなければ」と考えを改めた次第です。自分の人生に関係大ありでしたね (笑)。実際、私の専門分野である産業組織論や競争政策論、とりわけ「不完全競争の経済学」に引きつけて考えるべき問題だとも認識するようになりました。現時点では、生成 AI 市場は従来型のサプライチェーンに似た構造を持っていると考えており、自分がこれまでの研究で得た知見に基づき、生成 AI を取り巻く産業構造や競争政策について議論することに関心を持っています。

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