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ペーパーワークで目ぇが~まわる?

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2025.05.28
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Friebel, G., Heinz, M., Hoffman, M., Kretschmer, T. and Zubanov, N.(2024) “Is This Really Kneaded? Identifying and Eliminating Potentially Harmful Forms of Workplace Control,” ECONtribute Discussion Paper, 304.

北川梨津

はじめに

ペーパーワークは面倒くさいものとして忌み嫌われがちである。「私、ペーパーワーク大好きです!」という人に、筆者はまだ出会ったことがない。たしかに、ペーパーワークの中には重要なものもあるが、生産性を阻害しているだけのように感じられるものも多い。ペーパーワークが少ないほど業務効率は向上するのではないかと考えたくなる。それでも、職場には多くのペーパーワークが、取り組むべき業務として存在しているという揺るぎない事実がある。ということは、やはりペーパーワークは必要なのだろうか?

現実的な答えは、必要なペーパーワークもあれば、不要なペーパーワークもあるというものだろう。よく考えてみると、ペーパーワークには重要な機能がある。1 つはモニタリングである。従業員が正しく業務を行っているかどうかをモニタリングするために、ペーパーワークは有効である。たとえば、会社の経費を用いる際には事前または事後に所定の経費申請書類の作成・提出が必要となる。2 つ目がコーディネーションである。たとえば、プロジェクトの進捗を日報として記録しておくことで、途中で担当者が変わっても円滑に業務を引き継ぐことができる。これらのような機能がもたらす便益がペーパーワークを行うことの費用を上回るかどうかによって、そのペーパーワークの必要性は決まると言える。

今回紹介する Friebel et al.(2024) の研究は、組織においてペーパーワークを削減することがもたらす影響を検証している。彼らはドイツの大手ベーカリー・チェーンと共同で店舗レベルのランダム化比較試験 (RCT) を実施し、「今まで実施していた特定のペーパーワークを廃止する」という施策が従業員の生産性に与える効果を調べた。ちなみに、本論文のタイトルは “Is This Really Kneaded?” であるが、これは “knead” (〔パン生地〕を練る) と “need” (〜を必要とする) という英単語が同じ発音であることを利用して、「これ (パン生地) 本当にちゃんと練られてる?」と「これ (ペーパーワーク) 本当に必要?」をかけている。なるほど、これはよく練られた “pun” (英語で「ダジャレ」の意。なんと発音は「パン」) だ。

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