【鼎談】課題解決のカギは、資金循環にあり?(経済セミナー2025年6+7月号)
特集から(経済セミナー)| 2025.05.26
バブル崩壊以降、低物価・低賃金・低金利と経済の低迷を経験してきた日本。高齢化が進み、労働力減少も懸念される一方、家計の消費や企業の投資が低迷する背後では政府債務が膨らみ続けてきた。
多様な課題を抱える中で、デフレからインフレに転じ、賃金・金利も上昇を始めた今、日本経済はどのような姿に変わっていくのだろうか? 経済の血液とも言える「お金の流れ (資金循環)」の視点から徹底討論!
1 はじめに
—本日は「お金の流れ」を通じて、日本経済が抱える構造的な問題への理解を深めたうえで、将来への展望を考えていきたいと思います。まずは自己紹介から、よろしくお願いします。
宇南山 京都大学の宇南山です。1997 年に東京大学経済学部を卒業後、基本的にはアカデミックな世界で経済学の研究に従事してきました。大学院時代の主な研究テーマは為替レートでしたが、博士号取得後に専門を大きく変え、家計の消費の実証分析を中心に、消費税率引き上げや児童手当が消費に与える影響などについて研究してきました。また、実証分析で用いる経済統計の研究にも取り組んでいます。統計がどのようにつくられ、どんな情報を含んでいるのか、時には調査の実務にまで立ち入って議論しています。
指導教員だった吉川洋先生は常々「日本の経済学者として日本経済を研究するように」とおっしゃっていて、私もできるだけ日本のことを考えるようにしてきました。最近は家計部門にとどまらず、経済全体の整合性がどこで・どのように保たれているかという、よりマクロの視点を意識しつつ、日本経済の重要な課題である少子高齢化の影響などの分析を進めています。