(第16回)精神科医とAI

プロ精神科医あるあるノート(兼本浩祐)| 2025.05.14
外来のバックヤード、あるいは飲み会などフォーマルでない場で、臨床のできる精神科医と話していると、ある共通した認識を備えていると感じることがあります。こうした「プロの精神科医」ならではの「あるある」、言い換えれば教科書には載らないような暗黙知(あるいは逆に認識フレームの罠という場合もあるかもしれません)を臨床風景からあぶり出し、スケッチしていくつもりです。

(毎月中旬更新予定)

先日、TikTokでラランドのサーヤが相方のニシダの悪口をChatGPTに言わせようと、あの手この手を尽くす番組を視聴しました。

すごいなと思ったのは、サーヤの言うことに本当に上手に同意しながら、しかも西田の悪口は言わないという離れ業をChatGPTがぎりぎりまでやっているということです。サーヤはもちろん話術に関してはプロですから、言葉巧みに西田の悪口を言うしかないような状況に追い込むのですが、まるでベテランの精神科医のように、その挑発や口車には乗らないChatGPT。これを見ていると、かなりの数の精神科医がChatGPTには勝てないように思われました。そうであるとすれば、精神科医が単価に見合った仕事ができる可能性はどこにあるのか。今回はそれを考えてみたいと思います。

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兼本浩祐(かねもと・こうすけ)
中部PNESリサーチセンター所長。愛知医科大学精神神経科前教授。京都大学医学部卒業。専門は精神病理学、臨床てんかん学。『てんかん学ハンドブック』第4版、『精神科医はそのときどう考えるか』(共に医学書院)、『普通という異常』(講談社現代新書)など著書多数。