(第5回)ワクチンの安全性:100%安全はありえない、副反応ありと仮定するのが普通

コロナと数字と科学:ニュースに右往左往しないためのリテラシ(麻生一枝)| 2022.08.15
新型コロナ感染症に関する報道をはじめ,私達は,日々膨大な「データ」や「グラフ」や「科学用語」に接しています.しかし,ともすると,深く考えないまま鵜呑みにしてしまう危険性が常につきまとっています.この連載では,「データ」や「グラフ」を解釈するときのキーとなる基本的な考え方について紹介してゆきます.

(毎月中旬更新予定)

新型コロナが登場してからのこの 2 年半余りは、私にとって、メディア、そして科学や科学者について考えるよい機会となった。信頼に値する情報を求めていろいろ調べる中で気づいたのは、多くの良心ある人々の存在 — 入手可能なデータを客観的に解析し、それにもとづいた見解を、書籍や動画サイトを通じて伝えている人々1)の存在 — である。

特に興味深かったのは、個々に活動していたこれらの人々が徐々に手をつなぎ始めたことだ。そして、おそらく、5–11 歳の子供へのワクチン接種がきっかけで、これらの人々の力が結集したのだろう。子供へのワクチン接種の必要性に疑問を投げかける意見広告の新聞への掲載や「実録ワクチン後遺症」という映画の上映など、新型コロナの 3 シーズン目にしてようやく、ワクチンの長期的な副反応2)に注目が集まりだした。ワクチン接種後に具合の悪くなった人々の受け入れ窓口も、少しずつ設けられ始めた。

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脚注   [ + ]

1. 名古屋大学名誉教授小島勢二さんの YouTube での解説が特に素晴らしい。国内外の公式データや科学論文のデータを使って、論理的に議論を展開している。これまでに何がわかってきて、何がわかっていないのか。これからどういうことを調べなければならないかもよくわかる。検索すると複数の動画が出てくるが、例えばhttps://www.youtube.com/watch?v=ZlIrWAYBgQ8などが参考になるだろう。
2. 日本小児科学会の「知っておきたいワクチン情報」No.04、「予防接種の副反応と有害事象」によれば、薬やワクチンによる本来の作用 (主作用) とは異なる別の作用を、薬の場合は副作用、ワクチンの場合は副反応とよんでいる。

麻生一枝 サイエンスライター,成蹊大学非常勤講師.お茶の水女子大学理学部数学科卒業,オレゴン州立大学動物学科卒業,プエルトリコ大学海洋学科修士,ハワイ大学動物学Ph.D. 専門は動物行動生態学.「統計や実験デザインの理解は健全な科学研究に必須である」という信念のもと,これらの教育の普及に熱意を持って取り組む.著訳書に『科学でわかる男と女になるしくみ』 (SBクリエイティブ),『実データで学ぶ,使うための統計入門 ---データの取りかたと見かた』(共訳,日本評論社), 『生命科学の実験デザイン』(共訳,名古屋大学出版会),『科学者をまどわす魔法の数字,インパクト・ファクターの正体---誤用の悪影響と賢い使い方を考える』(日本評論社)など.