(第2回)感情に訴える表現や数字には要注意:用語の定義,示されない情報に目を向けよう

コロナと数字と科学:ニュースに右往左往しないためのリテラシ(麻生一枝)| 2022.05.16
新型コロナ感染症に関する報道をはじめ,私達は,日々膨大な「データ」や「グラフ」や「科学用語」に接しています.しかし,ともすると,深く考えないまま鵜呑みにしてしまう危険性が常につきまとっています.この連載では,「データ」や「グラフ」を解釈するときのキーとなる基本的な考え方について紹介してゆきます.

(毎月中旬更新予定)

$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

テレビのニュースを見ていると,この人たちは,一体,私たちに何を信じ込ませようとしているのかな,と疑問に思うことが多い.コロナ感染症に関して言えば,ひとつの大きなメッセージは「コロナはこわい」.もうひとつの大きなメッセージは,最初のワクチン接種開始以前は「とにかくワクチンを打てば大丈夫」,オミクロン株の登場以降は「とにかく 3 回目の接種をしなければ」だろう.そして,これらのメッセージを信じ込ませるために,控えめに見ても,より感情に訴える表現を用い,より感情に訴える数字だけを選んで報道しているように思えるのだが,どうだろう.

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について

麻生一枝 サイエンスライター,成蹊大学非常勤講師.お茶の水女子大学理学部数学科卒業,オレゴン州立大学動物学科卒業,プエルトリコ大学海洋学科修士,ハワイ大学動物学Ph.D. 専門は動物行動生態学.「統計や実験デザインの理解は健全な科学研究に必須である」という信念のもと,これらの教育の普及に熱意を持って取り組む.著訳書に『科学でわかる男と女になるしくみ』 (SBクリエイティブ),『実データで学ぶ,使うための統計入門 ---データの取りかたと見かた』(共訳,日本評論社), 『生命科学の実験デザイン』(共訳,名古屋大学出版会),『科学者をまどわす魔法の数字,インパクト・ファクターの正体---誤用の悪影響と賢い使い方を考える』(日本評論社)など.