(第16回)意味をなさない % データ — 児童虐待相談虐待者別構成割合の年次推移を例に

現実を「統計的に理解する」ための初歩の初歩(麻生一枝)| 2021.02.12
私達が生きる現実社会の多くの問題の理解には,種々の数値の測定や観察とそれを「統計的に処理する」作業が欠かせません.毎日のニュースでもありとあらゆる機会に「数値」が出てきますが,その意味をきちんと考えたり信憑性を疑うことは、必ずしもなされていないようです.この連載では,誰でも知っておいてほしい統計についての基本的な考え方や, 統計にまつわる誤解や陥りやすい罠を紹介していきたいと思います.

(毎月中旬更新予定)

$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$
パーセントなど、割り算をその計算式に含む数値には、本当に要注意だ。前々回お話ししたように、分母が小さいと出てきた数字は信用の置けないものになる。また、前回お話ししたように、分子と分母の操作で結構簡単に自分に都合の良い数値を作り上げることができるので、数字を使ったウソの道具にもなりやすい。

しかし、悪意はなく、単なる無知、あるいは、思考の欠如から、わけのわからない割り算をする人もいるようだ。10 年ほど前に初めて見て、それ以来、ずっと気になっているグラフを皆さんと共有することから始めよう。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について

麻生一枝 成蹊大学非常勤講師.お茶の水女子大学理学部数学科卒業,オレゴン州立大学動物学科卒業,プエルトリコ大学海洋学科修士,ハワイ大学動物学Ph.D. 専門は動物行動生態学.「統計や実験デザインの理解は健全な科学研究に必須である」という信念のもと,これらの教育の普及に熱意を持って取り組む.著訳書に『科学でわかる男と女になるしくみ』 (SBクリエイティブ),『実データで学ぶ,使うための統計入門 ---データの取りかたと見かた』(共訳,日本評論社), 『生命科学の実験デザイン』(共訳,名古屋大学出版会)など.