(第10回)法セミ2021年1月号の学び方のポイント&例題

Webでも!初歩からはじめる物権法(山野目章夫)| 2020.11.18
本コーナーは、雑誌「法学セミナー」と連動した企画です。
連載に先だって、次回取り扱う内容のポイントと例題を掲載していきます。予習に、力試しに、ぜひご活用ください。そして、「法学セミナー」本誌もあわせてご覧ください。初学者の強い味方となる「初歩からはじめる物権法」、2020年4月号より連載開始です!

(毎月中旬更新予定)

連載第10回の「学び方のポイント」

2020年4月号から始めた「法学セミナー」の連載「初歩からはじめる物権法」は、新しい年を迎え、1月号で第10回を迎えます。第8回から抵当権の話を進めてきました。抵当権は、第10回までで、ひとまずの区切りとしましょう。回を重ねてきたところで、すこし発展的な抵当権の題材を話題とします。

たとえば、複数と単数という観点。皆さんが知っているとおり、英語では、変則の場合もありますが、名詞にsを添えて複数を示します。和語は、しいて単複を明らかにしたい場合は、「複数の」、「単数の」とよぶ場合が多いでしょうか。

けれども、法文では「複数」、「単数」という表現を用いません。複数の不動産を同一の債権の担保として抵当権の目的とする場面など、どのようにして単複を表わすものでしょうか。そのような言葉のおもしろさを知る話も第10回においてしようと考えます。楽しみにしてくださるようお願いします。

なお、この連載の前半の部分(第6回まで)を電子書籍として刊行しました。電子書籍『初歩からはじめる物権法(上) 法学セミナーe-Book 7』。あわせて御紹介します。

連載第10回の「例題」

【例題1】

銀行であるAは、事業を営むBに対し、事業の資金として480万円を貸し渡した。この融資を担保するため、甲・乙の2つの土地にAのための抵当権が設定され、いずれも順位一番で登記された。甲土地はBの友人であるCが所有し価額が500万円であり、また、乙土地はBが所有し価額が1000万円である。甲土地にはDの順位二番の抵当権も登記されており、その被担保債権は、200万円である。また、乙土地には、Eが有する債権を担保するため、順位二番の抵当権が登記されている。金額の計算において、利息などの定期金や執行費用は、実務上は大切であるが、話がややこしくなるから、考えないでよい。

(1) 担保不動産競売により甲土地が売却された場合の爾後の法律関係は、どのようになるか。

(2) 担保不動産競売により乙土地が売却された場合の爾後の法律関係は、どのようになるか。

【例題2】

Aが、Bに対し、2011年5月20日を弁済期とする金銭債権を有する。27番の土地は、Bが所有し、Bを登記名義人とする所有権の登記がされている。Aの債権を担保するため、27番の土地に抵当権が設定され、その登記もされた。その後、Bが27番の土地をDへ売り、BからDへの所有権の移転の登記もされた。この売買契約に基づき、27番の土地は、2005年2月9日、Dに対し引き渡された。

(1) 2016年5月20日が経過した場合の法律関係は、どのようになるか。

(2) 2025年2月9日が経過した場合の法律関係は、どのようになるか。

【例題3】

Aが、Bに対し、2011年5月20日を弁済期とする金銭債権を有する。31番の土地は、Bが所有する。Aの債権を担保するため、同日、31番の土地に抵当権が設定され、その登記がされた。31番の土地は、2005年2月9日からEが占有している。

(1) 2016年5月20日が経過した場合の法律関係は、どのようになるか。

(2) 2025年2月9日が経過した場合の法律関係は、どのようになるか。

 


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山野目章夫(やまのめ・あきお 早稲田大学教授)
1958年生まれ。亜細亜大学法学部専任講師、中央大学法学部助教授を経て現職。
著書に、『不動産登記法 第2版』(商事法務、2020年)、『ストーリーに学ぶ 所有者不明土地の論点』(商事法務、2018年)、『詳解 改正民法』(共著、商事法務、2018年)、『新・判例ハンドブック1、2』(日本評論社、2018年)、『物権法 第5版』(日本評論社、2012年)など。