(第6回)法セミ2020年9月号の学び方のポイント&例題

Webでも!初歩からはじめる物権法(山野目章夫)| 2020.07.20
本コーナーは、雑誌「法学セミナー」と連動した企画です。
連載に先だって、次回取り扱う内容のポイントと例題を掲載していきます。予習に、力試しに、ぜひご活用ください。そして、「法学セミナー」本誌もあわせてご覧ください。初学者の強い味方となる「初歩からはじめる物権法」、2020年4月号より連載開始です!

(毎月中旬更新予定)

連載第6回の「学び方のポイント」

法学セミナー」の9月号は、連載「初歩からはじめる物権法」の第6回をお届けします。この回は、所有権が主題です。数人で所有権を有する場合、つまり共有も扱います。

読者の皆さんは、“メガ共有”という言葉を耳にして、どのような事態を想像するでしょうか。

きわめて多数の人たちが一つの物を共有する事態を指して述べられたことがあります(法制審議会民法・不動産登記法部会第1回会議、2019年3月19日)。

そうではなく、たとえば3人の少年が900円の羊羹を等しい持分で共有しているような場合は、共有を終わらせることが難しくありません。3人が話し合えばよいことです。話し合って、一人の子に羊羹の全部を取得させ、その子が他の2人に300円ずつお金を払ってもよいし、あるいは羊羹を同じ大きさの3つに切り分け、一人ずつ一片を得ることでもよいでしょう。

けれど、多人数になったら困りますね。連絡がつかない人だっているでしょう。いろいろ面倒です。

連載のこの回は、共有者の一部の所在が知れなかったらどうするか、ということも読者の皆さんと悩んでみようと考えます。

連載第6回の「例題」

【例題1】
A・B・Cが87番の土地を共有している。持分はAが1/2であり、また、B・Cが各1/4である。ただし、Bの所在がわからない。

(1) Dが87番の土地の上に所在する甲建物を所有している。Aは、Dに対し甲建物の収去を請求することができるか。

(2) CがDから甲建物を買った。Aは、Cに対し甲建物の収去を請求することができるか。

(3) Cが、Eに対し、甲建物を売り、その際、甲建物を所有するため87番の土地を使用してよい、と告げた。Aは、Eに対し甲建物の収去を請求することができるか。

【例題2】
A・B・Cが45番の土地を共有している。持分はAが1/2であり、また、B・Cが各1/4である。Bは、所在がわからない。

Dは、Aに対し、45番の土地に駐車をする目的で45番の土地を賃借したいと申し込んだ。Aは、Cと相談のうえ、Dの申込みを承諾し、これにより成立した賃貸借契約に基づき同土地をDに引き渡した。

帰来したBは、Dに対し同土地の明渡しを請求することができるか。

【例題3】
建物の賃借人が、(1)賃借している建物に冷暖房の設備を備え付けた場合、(2)その建物の屋根の雨漏りのする部分を修理した場合、および(3)建物を増築し、従来はなかった浴室を設けた場合について、各場合の法律関係は、どのように考えられるか。


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山野目章夫(やまのめ・あきお 早稲田大学教授)
1958年生まれ。亜細亜大学法学部専任講師、中央大学法学部助教授を経て現職。
著書に、『不動産登記法 第2版』(商事法務、2020年)、『ストーリーに学ぶ 所有者不明土地の論点』(商事法務、2018年)、『詳解 改正民法』(共著、商事法務、2018年)、『新・判例ハンドブック1、2』(日本評論社、2018年)、『物権法 第5版』(日本評論社、2012年)など。