立法不作為と違法確認訴訟(興津征雄)

判例時評(法律時報)| 2020.08.27
一つの判決が、時に大きな社会的関心を呼び、議論の転機をもたらすことがあります。この「判例時評」はそうした注目すべき重要判決を取り上げ、専門家が解説をする「法律時評」の姉妹企画です。
月刊「法律時報」より掲載。

(不定期更新)

◆この記事は「法律時報」92巻10号(2020年9月号)に掲載されているものです。◆

東京高裁令和2年6月25日判決

1 はじめに

令和2年6月25日、東京高裁は、在外国民最高裁判所裁判官国民審査権訴訟の控訴審判決を言い渡した1)。同判決は、立法不作為による権利制限の違法確認訴訟の適法性を肯定し、請求を認容するという、裁判例上おそらく初めての、画期的な判断を示した。本稿は、この違法確認訴訟の理論的意義を速報的に解説することを目的とする2)

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脚注   [ + ]

1. 東京高判令和2・6・25(令和元(行コ)167号)。判決文は、原告を支援する公共訴訟プラットフォーム「CALL4」のウェブサイトに公開されている(判決文のPDF、2020年7月28日閲覧)。原判決は、東京地判令和元・5・28判時2420号35頁。提訴の背景などについては、CALL4代表者の手記である谷口太規「在外国民審査権違憲判決の来歴」法時91巻9号(2019年)4-6頁参照。【Web日本評論にも掲載
2. 筆者は、原告代理人の依頼により、東京高裁に宛てて意見書を執筆したが、違法確認訴訟には触れていない。意見書の内容は、興津征雄「在外国民最高裁判所裁判官国民審査権訴訟 意見書」神戸法学雑誌69巻4号(2020年)1-37頁として公表されている。