在外国民審査権違憲判決の来歴(谷口太規)

判例時評(法律時報)| 2019.08.01
一つの判決が、時に大きな社会的関心を呼び、議論の転機をもたらすことがあります。この「判例時評」はそうした注目すべき重要判決を取り上げ、専門家が解説をする「法律時評」の姉妹企画です。
月刊「法律時報」より掲載。

(不定期更新)

◆この記事は「法律時報」91巻9号(2019年8月号)に掲載されているものです。◆

東京地裁2019年5月28日判決 裁判所ウェブサイト

1 「制度を問う」訴訟を前にして

アメリカ留学中に、ミシガン州デトロイトにある公設刑事弁護人事務所でインターンを始め、卒業後に常勤スタッフとなった。弁護士としてではなくソーシャルワーカーとしての職であったが、間近で刑事弁護人たちの仕事を見ることができた。そうした中、「実はさぼっていたんじゃないだろうか。」と考えることが何度もあった。

アメリカに行く前、比較的多くの刑事事件を取り扱っていた。日本の刑事司法では、裁判所の判断という点でも、刑事弁護人が持つリソースという点でも、弁護人には絶望的に思えるような状況に出会うことが少なくない。それでも自分なりに、熱心に、依頼者のために献身的に活動してきたつもりであった。厳しくても歯を食いしばって頑張り抜くべきと考えていたし、研修の講師などを務めた際にもそのように後輩弁護士たちに伝えてきた。しかし、私がアメリカで見たのは、自分が所与の前提としてもがいていたその「絶望の枠組み」自体を問う訴訟の活発さであった。

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