(第5回)コロナ禍で懸念される南欧諸国の雇用悪化 — 地下経済に注目して(土田陽介)

コロナ危機とEUの行方| 2020.08.14
2020年に入って突如世界を席巻し始めた新型コロナウイルス感染症は,2020年3月11日にはWHOによってパンデミック宣言され,依然として予断を許さない状況が続いています.このコラムでは,さまざまな立場のEU研究者が,「コロナ危機下のヨーロッパ」がどう動くのか,どこへ向かうのかについて読み解いていきます.(全12回の予定)

過去最大の雇用喪失を経験したスペイン

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う雇用の悪化が深刻な欧州であるが、特に地中海沿岸の南欧諸国でそれが顕著だ。スペイン統計局によると、2020 年第 2 四半期の雇用者数は前期比 107 万 4,000 減と過去最大のマイナスを記録した (図表1)。失業率は 15.3%と前期から 1%ポイント程度上昇し、2 年ぶりの高水準となった。

図表1 スペインの雇用者数

多くの雇用が失われたにもかかわらず失業率の上昇が小幅にとどまった背景には、急激な景気と雇用の悪化を受けて就労の機会を得る目処が立たないとして、多くの人々が労働市場から退出してしまったことがある。具体的には、第 2 四半期の非労働力人口は前期比 106 万 3,000 人増となり、失われた雇用者の数とほぼ一致する。

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土田陽介 (つちだ・ようすけ)
三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング (株)調査部副主任研究員。
2005 年一橋大経卒、06 年同修士課程修了。株式会社浜銀総合研究所を経て、2012 年より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社調査部にて、エコノミストとして活動。欧州を中心にロシア、トルコ、新興国のマクロ経済、経済政策、政治情勢などについて調査・研究を行う。
主要経済誌への寄稿 (含むオンライン)、学会誌への査読付き論文多数。近著に『ドル化とは何か --- 日本で米ドルが使われる日』(ちくま新書)、『図説ヨーロッパの証券市場 (2020 年版)』(分担執筆、日本証券経済研究所) がある。