2019・8・15と戦後責任(遠藤比呂通)

法律時評(法律時報)| 2019.08.01
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。
ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。

(毎月下旬更新予定)

◆この記事は「法律時報」91巻9号(2019年8月号)に掲載されているものです。◆

1 韓国併合の侵略性

法律時報1989年8月号は、「平成元年」八・一五と戦後責任という特集を組み、そのメイン企画として、猪木正道・和田春樹・内海愛子・大沼保昭による座談会「戦後責任─十五年戦争と植民地支配責任の受けとめ方」を掲載している。今日の視点から見て重要だと思われるのは、1965年の日韓基本条約及び1910年の韓国併合条約に対する和田氏と大沼氏の意見の対立であろう。現代史家の和田氏が、日韓基本条約の問題は2条にあり、要するに韓国併合条約は当初から無効であったと主張したのに対し、国際法学者の大沼氏は、道義的に悪いのは疑問の余地がないとしながらも、国際法上そもそも最初から無効だったというのには無理があるとした。

この論争の背景には、日韓基本条約2条の締結過程で、韓国併合の侵略性が最大の争点となり、韓国側は、併合条約は国際法違反であり初めから無効であったと主張したのに対し、日本側は、当初有効であったが領土喪失により無効となったという解釈を示したが一致をみず、妥協の産物として、already void =「もはや無効」という言葉が使われたという経緯がある(祖川武夫『国際法と戦争違法化』〔信山社、2004年〕243頁以下)。

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