(第12回)一旦不起訴にした被告人を4年後に再逮捕し事実を歪曲した新証拠を作成して無理やり起訴―甲山事件(1)

捜査官! その行為は違法です。(木谷明)| 2019.08.14
なぜ誤った裁判はなくならないのか――。
警察官、検察官の証拠隠しや捏造、嘘によって、そしてそれを見抜かなかった裁判所によって、無実の人が処罰されてしまった数々の冤罪事件が存在します。
現役時代、30件以上の無罪判決を確定させた元刑事裁判官・木谷明氏が、実際に起こった事件から、刑事裁判の闇を炙り出します。

(毎月中旬更新予定)

甲山事件(1)

  • 神戸地判昭和60年10月17日判時1179号28頁
  • 大阪高判平成2年3月23日判時1354号26頁
  • 神戸地判平成10年3月24日判時1643号3頁
  • 大阪高判平成11年9月29日判時1712号3頁

本件の捜査・審理の経過の概略を簡単に示すと、以下のとおりである。

逮捕・勾留→処分保留釈放→不起訴処分→再逮捕・再勾留→勾留延長請求却下→起訴→無罪判決①(神戸地裁)→検察官控訴→破棄差戻し(大阪高裁)→被告人上告→棄却(最高裁)→無罪判決②(神戸地裁)→検察官控訴→控訴棄却(大阪高裁)→検察官上告せず(無罪判決確定)

他方、検察官は、その間に、被告人のアリバイを証言した上司・同僚を偽証罪で逮捕・勾留して起訴するなどもしており、本件の捜査・公判は終始異例ずくめだった。最終的には無罪判決が確定したが、四半世紀に及ぶ裁判闘争により、被告人の人生はもみくちゃにされた。

なお、この事件については、論ずるべき点が多数あるので、2回に分けて紹介することとする。

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