発達障害と感情(本田秀夫)(特別企画:子どもの“困った”感情)

特別企画から(こころの科学)| 2019.02.26
心理臨床、精神医療、教育、福祉等の領域で対人援助にかかわる人、「こころ」に関心のある一般の人を読者対象とする学術教養誌「こころの科学」。毎号の特別企画では、科学的知見の単なる解説ではなく、臨床実践に基づいた具体的な記述を旨としています。そうした特別企画の一部をご紹介します。

(毎月中旬更新予定)

◆本記事は「こころの科学」204号(2019年3月号)の、田中 究=編「特別企画 子どもの“困った”感情」に掲載されているエッセイです。◆

怒り、悲しみ、不安、喜び……「感情」は私たちにとって身近な存在ですが、ときに厄介なものにもなりえます。とくに幼い子どもは、感情のコントロールがうまくできず、また限られた表現方法しか知らないために、周囲の大人を困らせることが珍しくありません。でも、激しい感情に翻弄され、困らされているのは子ども自身も同じです。この“困った”状況でどのように働きかけることが、子どもの豊かなこころの発達を助けるのでしょうか。本特別企画には、保育・教育や心理、医療といった現場の援助職の知恵が詰まっています。

(「こころの科学」編集部)

DSM-5(2013)およびICD-11(2018)の両者で、発達障害(知的障害も含む)は「神経発達症群」としてまとめられた。ここには、知的能力障害群(知的発達の遅れ)、コミュニケーション症群(コミュニケーションの異常)、自閉スペクトラム症(ASD:対人関係の異常とパターン的な興味・行動)、注意欠如・多動症(ADHD:不注意、多動性、衝動性)、限局性学習症(SLD:書字、読字、計算の能力の異常)、運動症群(運動機能の異常)、チック症群(音声または運動チック)が含められている。

これらの診断名と( )内に簡単に記したそれぞれの特徴をもう一度読み返してみると、「感情」またはそれに類する言葉が一切ないことがわかる。つまり、現在の神経発達症群の中に、感情発達の異常は、診断概念としても、そして症状の一つとしても、含められていないのである。

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