(第5回)独仏のアーヘン条約は欧州統合での主導権回復につながるか?

EUの今を読み解く(伊藤さゆり)| 2019.02.27
2019 年は EU にとって、イギリス離脱のほか、5 年に 1 度の欧州議会選挙、それに伴う EU の行政執行機関・欧州委員会のトップにあたる委員長の交代と体制の刷新、さらに首脳会議常任議長(通称、EU 大統領)、欧州中央銀行(ECB)総裁も交代するという大変革の年です。このコラムでは、こういったイベントを軸に EU の今を読み解いていきます。

(毎月下旬更新予定)

19 年 1 月 22 日、ドイツ西部のアーヘンでドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領が「アーヘン条約」に調印した。

アーヘン条約は欧州政策や外交・防衛面での協力、国境地域での住民の交流促進など 28 の条項で構成される。第二次世界大戦後の独仏の和解を確認し、欧州統合を主導してきた両国の協力関係の土台となった 1963 年の「エリゼ条約」。その調印から 56 年目に調印された新たな条約には、独仏の協力をさらに深め、欧州統合の深化をリードする役割を果たそうとの願いが込められている。

しかし、新たな条約が、欧州における独仏の指導的な役割を強化し、EU の求心力を高めると楽観できる状況にはない。

理由は 2 つある。

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