『消費者法講義 第5版』(編:日本弁護士連合会)

一冊散策| 2018.10.25
新刊を中心に,小社刊行の本を毎月いくつか紹介します.

 

 

第5版はしがき

本書第4版が2013年3月に出版され、その後5年半が経ちました。

この間に消費者問題や消費者法をめぐる状況に大きな変動が生じていることは、会長による「刊行によせて」でも触れられているとおりであり、ますます消費者法分野の重要性が増していることが実感されます。

本書は、初版出版以降、各地の法科大学院の「消費者法」の講義で活用されるとともに、ボリュームある消費者法をコンパクトにまとめてある点が評価され、多くの大学の学部生や研究者、実務家からも好評を得てきました。しかし、消費者法のダイナミックな動きの中では、既に第4版の内容も古くなってしまいました。「消費者法」は現に起きている問題に対して解決方法を示す法律群であり、まさに生きている法律です。ですから、何よりも最新の情報が必要になります。そこで、内容を最新のものとして改訂いたしました。

旧版同様、本書を教科書として基本的な知識を習得し、具体的なケースは補充して頂いて、法科大学院の講義で利用して頂き、また、多くの学生・研究者・実務家のみなさんも広く活用して頂ければと思います。

第5版では、日本評論社の鎌谷将司氏には大変お世話になりました。ここに御礼を申し上げます。

2018年9月

日本弁護士連合会消費者問題対策委員会幹事
弁護士 平澤慎一

第5版の刊行によせて

本書は、法科大学院における消費者法の教材とすることを主たる目的として編集された『消費者法講義』の第5版です。

2013年3月に第4版が刊行されて以降、景品表示法の改正、食品表示法の制定、消費者裁判手続特例法の制定をはじめ、特商法・割賦販売法や消費者契約法の改正など、消費者法分野の法改正が次々と行われてきました。消費者法関連の多くの重要な判例も示されています。

また、2009年に発足した消費者庁や消費者委員会は、間もなく発足10年を迎え、消費者の権利を擁護するための行政機関としての重要性は増すばかりです。他方、2012年に制定された消費者教育推進法が目指す「消費者市民社会」構築は、消費者教育を核として各地で様々な実践が行われていますが、まだまだ不十分と言わざるを得ません。

このように消費者法の分野はダイナミックに動いており、歴史的な変革期の中にありますが、消費者問題が起きないように、あるいは適切に解決されるようにするには、消費者法・消費者行政の担い手による不断の努力が不可欠であり、消費者法の存在意義はますます重要なものとなってきています。

以上の状況を踏まえて、第5版は、第4版以降の法改正を織り込み、新判例をフォローし、法科大学院での講義を踏まえたフィードバックを行ってアップツーデートな内容となっております。また、「理論的教育と実務教育の架橋」や「社会に生起する様々な問題に対して広い関心をもたせる」との法科大学院の教育理念を、消費者法の分野で具体化するという書籍のコンセプトに変更はありません。

本書は、初版以来、学部学生から法律実務家まで広い範囲の読者に受け入れられ版を重ねて参りました。この第5版も、従来と同様に広い範囲の方々に活用され、消費者法発展の一助となることを強く期待しています。

2018年9月1日

日本弁護士連合会
会長 菊地裕太郎

目次

第1章 消費者問題と消費者法……齋藤雅弘  ためし読み

第2章 消費者契約の過程1―─契約の成立と意思表示の瑕疵……齋藤雅弘
第3章 消費者契約の過程2――契約内容と効力……齋藤雅弘
第4章 消費者契約法―─契約締結過程と契約内容の適正化……野々山 宏
〔コラム〕高齢者の消費者被害……石戸谷 豊
第5章 消費者取引と不法行為……齋藤雅弘
〔コラム〕豊田商事事件……齋藤雅弘
第6章 特定商取引法……村 千鶴子
〔コラム〕サクラサイト事件……瀬戸和宏
第7章 販売信用・資金決済と消費者……池本誠司
〔コラム〕消費者被害の国際化……村本武志
第8章 独占禁止法――公正かつ自由な競争……安保嘉博・松井良太
第9章 表示・広告と消費者……齋藤雅弘
第10章 金融商品と消費者……桜井健夫
〔コラム〕行動経済学と消費者被害……桜井健夫
第11章 製品の安全と被害の救済……朝見行弘
〔コラム〕消費者法・環境保護運動と法律家……浅岡美恵
第12章 住宅と消費者……谷合周三
第13章 消費者信用と多重債務……平澤慎一
〔コラム〕商工ローン・ヤミ金融との戦い……新里宏二
第14章 医療サービスと消費者……桜井健夫
第15章 情報化社会と消費者……横山哲夫・高木篤夫
〔コラム〕個人情報の関連する消費者問題……板倉陽一郎
第16章 消費者紛争解決手続……佐々木幸孝・鈴木敦士
〔コラム〕消費者事件の間口と奥行き――霊視商法弁護団……澤藤統一郎
第17章 消費者行政と消費者政策……池本誠司
〔コラム〕消費者市民を実践する消費者教育を……青島明生

事項索引
裁判例索引

書誌情報など