『監視社会をどうする! 「スノーデン」後のいま考える、私たちの自由と社会の安全』(編:日本弁護士連合会第60回人権擁護大会シンポジウム第2分科会実行委員会)

一冊散策| 2018.09.25
新刊を中心に,小社刊行の本を毎月いくつか紹介します.

 

 

はじめに

「情報は誰のもの?」
これは昨年10月、日本弁護士連合会主催の第60回人権擁護大会シンポジウム第2分科会のタイトルだ。副題は「監視社会と情報公開を考える」。今日の様々な情報問題をばらばらに考えているだけでは全体状況を見失う。データ社会において私たちの個人データは誰にどのように利用されているのか、利用されようとしているのか。市民社会にとって重要な情報は社会に公表されているか。全体的に眺めることで現代社会に潜んでいる問題を考えようという企画だ。

シンポジウムは、エドワード・スノーデン氏がインターネット中継で参加したこともあって、千人近い弁護士や市民が参加し大盛況だった。本書はこのシンポジウムの内容をよりわかりやすく再構成し、若干のその後を付け加えたものだ。

冒頭にスノーデン氏のインタビュー内容を全文掲載したから、彼の問題意識がよくわかるはずだ。
第1章以下は、分科会実行委員会(情報問題対策委員会、秘密保護法対策本部、共謀罪法対策本部、人権擁護委員会、消費者問題対策委員会、刑事法制委員会、公害対策・環境保全委員会、憲法問題対策本部の有志)のメンバーで、第1章(監視社会の何が問題か)、第3章(監視社会の実態――日本)、第4章(監視社会を進める制度)、第6章(情報公開による権力の監視)、第7章(調査報道による権力の監視)の執筆を分担した。このようなわけで、日弁連の公式見解は、日弁連の意見書などを除けば出てこない。
また、シンポジウムのパネリストとしてご参加いただいた曽我部真裕氏には憲法論の観点から第2章(「監視社会と『二つの憲法論』」)、澤康臣氏には報道の今日的意義の観点から第7章4(「取材・報道の力で『逆監視』」)をそれぞれ論文の形で、スティーブン・シャピロ氏にはシンポジウム当日の講演内容である米国社会の実情を第5章(「監視社会の実態――アメリカ」)として反訳の形で、ご協力いただいた。

本書のタイトル、「監視社会をどうする!」は、「情報は誰のもの?」という問いの先に見えてくる現代社会に私たちはどう向き合うかという問題提起である。

本書は順を追って読む必要はない。興味のあるところから読み始め、そこから他に読み進んでいただき、最終的に全部を読んでいただくことで、読者がこの問題を考えるヒントになれば、著者らとしては幸甚である。

2018年8月
編者を代表して  清水 勉

目次

プロローグ 情報は誰のもの?
——監視社会の恐怖……エドワード・スノーデン《インタビュー》

第1部 監視社会はなぜ問題なのか

第1章 監視社会の何が問題か……田村智明
第2章 監視社会と「二つの憲法論」
——憲法学から見た監視社会の問題点……曽我部真裕
第3章 監視社会の実態——日本……武藤糾明・瀨戸一哉
第4章 監視社会を進める制度——秘密保護法、共謀罪……海渡雄一
第5章 監視社会の実態——アメリカ……スティーブン・シャピロ《講演》

第2部 監視社会をどうするか

第6章 情報公開による権力の監視
——監視社会に抗するために市民ができること……山口宣恭
第7章 調査報道による権力の監視
——もうひとつの情報公開……清水 勉・澤 康臣

シンポジウムへのメッセージ……ヨハネス・マージング教授

情報は誰のためにあるのか——おわりにかえて……三宅 弘

書誌情報など