君が代斉唱、不起立で再雇用拒否 元教職員の敗訴確定

ロー・フォーラム 裁判と争点(法学セミナー)| 2018.09.26
毎月、全国の裁判所で数多くの判決や決定が下される中から、私たちの社会に問題を提起する判決、法律学上の議論に影響を及ぼす判決など、注目の裁判を毎月ひとつずつ紹介します。
月刊「法学セミナー」より、毎月掲載。

(毎月中旬更新予定)

◆この記事は「法学セミナー」765号(2018年10月号)に掲載されているものです。◆

最高裁、都の裁量権認める

「君が代」の斉唱時に起立しなかったことを理由に、退職後の再雇用を拒否したのは違法だ─。東京都立高校の元教職員がそう訴え、都に賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷は7月19日、計約5300万円の賠償を命じた1、2審判決を破棄し、請求を棄却する判決を言い渡した。山口厚裁判長は、元教職員らが再雇用を拒否された2006~08年度の制度では「都教委が裁量権を乱用したとはいえない」と結論づけた。元教職員側の逆転敗訴が確定した。

君が代をめぐる訴訟では、最高裁が11年、起立斉唱を命じた職務命令を合憲としながら、憲法19条が保障する思想・良心の自由を「間接的に制約する面がある」と指摘した。さらに12年には、職務命令に違反した教職員の懲戒処分について「戒告は裁量権の範囲内だが、減給・停職は慎重に考慮する必要がある」との基準を示した。論点が残されていたのは、不起立を理由に退職後の再雇用を拒否することは自治体の裁量権の範囲内と言えるかどうか。東京や大阪で訴訟が起こされたが、地裁や高裁の判断は分かれていた。

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