(資料)事件発生から死刑処刑までの年表

渋谷重蔵は冤罪か?―19世紀、アメリカで電気椅子にかけられた日本人(村井敏邦)| 2018.10.01
日本開国から24年、明治の華やかな文明開化の裏側で、電気椅子の露と消えた男がいた。それはどんな事件だったのか。「ジュージロ」の法廷での主張は。当時の日本政府の対応は。ニューヨーク州公文書館に残る裁判資料を読み解きながら、かの地で電気椅子で処刑された日本人「渋谷重蔵」の事件と裁判がいま明らかになる。

(毎月下旬更新予定)

事件発生から処刑まで

以下に、かんたんな年表を記載しておく。

  • 1889年11月10日 事件発生
  • 11月19日 ニューヨーク郡・市大陪審 Schihick Jugigoを第一級殺人罪で正式起訴決定
  • 12月 3日 Court of Oyre and Terminerで、陪審裁判開始。
  • 12月 5日 弁護人ハインゼルマン 最終弁論、検察官 ゴフ 最終弁論、裁判官 説示。陪審員、評議の結果、Jugigoに第1級殺人で有罪の評決。
  • 12月16日 弁護人 new trial の動議、裁判所 却下。裁判所 シンシン刑務所において、1890年2月13日に始まる週内のいずれかの日に、Schihick Jugigoに対する死刑の執行が命じられべしと決定。(控訴のため、1890年12月1日まで執行延期決定)
  • 1890年9月9日 ヘイビアスコーパス1)の申立て
  • 10月8日 却下
  • 12月1日 裁判所 1891年1月12日に始まる週に死刑執行すべしと決定
  • 1891年1月7日 2度目のヘイビアスコーパス申立て
  • 1891年5月11日 連邦最高裁判所決定
  • 1891年7月7日 シンシン刑務所において死刑執行

 

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村井敏邦(むらい・としくに 弁護士・一橋大学名誉教授)
1941年大阪府生まれ。一橋大学法学部長、龍谷大学法科大学院教授、大阪学院大学法科大学院教授などを歴任。『疑わしきは…―ベルショー教授夫人殺人事件』(日本評論社、1995年、共訳)、『民衆から見た罪と罰―民間学としての刑事法学の試み』(花伝社、2005年)ほか、著書多数。

脚注   [ + ]

1. ヘイビアス・コーパス(Habeas Corpus)とは、人身保護令状のことで、違法に身体を拘束されているという疑いのある人を、裁判所の令状で開放する制度。刑事事件で拘束されている場合だけではなく、たとえば、精神病院の強制入院などでも、不当に身体拘束が行われているという場合には、この令状が発付されると、拘束されている人を開放しなければならない。