危機対応のための資金確保の意義(中里実)

法律時評(法律時報)| 2024.02.27
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。
ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。

(毎月下旬更新予定)

◆この記事は「法律時報」96巻3号(2024年3月号)に掲載されているものです。◆

1 はじめに

自然災害その他の危機に対応するための、国家の資金確保の意味について簡単に述べてみたい。この問題は、法律学と経済学の両方にまたがり、政治とも深く関わるものであるから、難しい点も多い。特に、一定の政治的立場に立った強い議論がなされることも少なくないので、ここでは、可能な限り、客観的な問題の把握に努めたい。

2 パブリック・セクターの活動の2つの見方

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経済学の議論において、通常のミクロ経済学における実物の財・サービスの取引をめぐる議論(そこにおいては、金銭は、支払手段、価値表示手段ということになろう)の他に、金銭の流れを中心に考えていく金融経済学的な議論が存在し、後者に関しては、例えば、金融部門が実体経済に与える影響等に関する議論が行われる。

他方、法律学の世界においては、特に公法において、公的部門の権限行使の話と、そのための資金的裏付けの話が、独立になされる傾向がある。この点を、行政法と財政法の関係という観点から大雑把にパラフレーズすると、以下のようになるのではなかろうか。

まず、行政法においては、パブリック・セクターの活動について、主に、組織・権限の面から分析を加える(行政組織法、行政作用法)。確かに、公的活動を担う組織が存在し、そこに人が張り付いていないと、パブリック・セクターが何もできないことは事実である。したがって、公的活動における組織・権限面からのガバナンスを考える必要があり、そこに行政法の存在意義があるということになろう。

他方、財政法においては、パブリック・セクターの活動について、資金面から分析を加える。公的活動を担う組織が存在し、そこに人が張り付いていたとしても、そこに資金の裏付けがなければ、パブリック・セクターが何もできないことは明白である。したがって、公的活動における資金面からのガバナンスを考える必要があり、そこに財政法の存在意義があるということになろう。

法律学においては、一般に、前者の議論が中心になるが、ここではあえて資金面に着目して、後者の議論に光をあててみたい。これは換言すれば、パブリック・セクターの活動を、いわば財務省的な視点から見るということかもしれない。

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