(第23回)生命発生の理想郷はいずこに?
地球惑星科学の地平を求めて(半揚稔雄)| 2024.03.19

(毎月中旬更新予定)
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今から半世紀以上前まで,世の多くの賢者は,生命という視点で,地球が宇宙の中で最も優れた存在と考えていた.しかし,1995 年 7 月,スイスのマイヨール博士らが,太陽系から遠く離れた恒星を巡る惑星,いわゆる系外惑星を最初に発見して以来,そうした考えは鳴りをひそめ,太陽系も系外惑星系と同じ仲間と考えることが一般的となった.こうした観点に立って系外惑星を見渡したとき,地球の質量の 10 倍程度までの地球型惑星が多数見つかり,しかもハビタブルゾーン1)内にあるものがいくつも発見された.これは,生命発生の可能性を示唆するものとして注目されている.
生命を育む地球という天体の捉え方
1710 年,ドイツの数学者ライプニッツ (ニュートンと並ぶ微分積分学の創始者) は,数多ある星々の中で,“地球は最高に整えられた天体” とする地球中心主義の考え方を展開した.この考えは,その根拠に非科学的な希望的観測を前提としているとして,多くの批判を浴びた.地球外生命を探索する現代の研究者にも,ライプニッツの考えに連なる地球中心主義の立場を取る研究者がいないわけではない.
脚注
1. | ↑ | ハビタブルとは,“居住可能な” との意味で,ハビタブルゾーンとは,太陽などの恒星を中心とした,生命が生存可能な帯状の領域を指す天文学用語. |

著書:『ミッション解析と軌道計の基礎』(現代数学社,2014 年),『入門連続体の力学』(日本評論社,2017 年),『つかえる特殊関数入門』(同,2018 年) ,『惑星探査機の軌道計算入門 (改訂版)―― 宇宙飛翔力学への誘い』(同,2023 年)など.