(第20回)氷天体に潜む内部海とは?

地球惑星科学の地平を求めて(半揚稔雄)| 2023.12.18
お馴染だと思っているはずの地球や宇宙も,自然科学の目で見ると実に多様な顔を見せてくれます.この連載では,地球を中心とした様々な対象や現象について,最近の知見をもとに改めて解説します.

(毎月中旬更新予定)

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土星探査機カッシーニ,冥王星探査機ニューホライズンズ,および小惑星探査機ドーンによる観測成果として,太陽系の氷天体には,地下に液体の海,つまり “内部海” を有するものが複数あることが明らかになった.そして,この内部海の化学組成も解明されようとしている今,そこに育まれるであろう生命の存在の可能性と太陽系形成論について,最新の知見を整理してみた.

太陽系に海を探して

地球の海は,生命が誕生したであろう根源的な場所と考えられている.太陽系探査の究極の目的は,“地球以外に生命を育みうる天体が存在するのか?” という命題に答を出すことにある.これまでの外惑星探査で分かったことは,海はおろか凍結した氷天体ばかりが多数存在するという現実である.ここで氷天体とは,氷惑星 (海王星,天王星など),氷準惑星 (冥王星,ケレスなど),氷衛星 (エンケラドス,エウロパなど) を指す.

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半揚稔雄(はんようとしお) 1947 年,福岡県に生まれる.その後,北海道札幌市にて子供時代を過ごす.小学校 4 年の 10 月に,ソヴィエト連邦 (現在のロシア) が「世界初の人工衛星スプートニク 1 号を打ち上げた」とのニュースに接して,宇宙に興味を覚える.以来,宇宙飛行に関心を寄せ,物理学で理学士となるも,これが高じて防衛大学校,東京大学宇宙航空研究所 (現・JAXA宇宙科学研究所) などで一貫して宇宙飛翔力学の研究に携わる.この間に,東京大学から工学博士の学位を授かる.

著書:『ミッション解析と軌道計の基礎』(現代数学社,2014 年),『入門連続体の力学』(同,2017 年),『つかえる特殊関数入門』(同,2018 年) ,『惑星探査機の軌道計算入門 (改訂版)―― 宇宙飛翔力学への誘い』(日本評論社,2023 年)など.