(第17回)小惑星ベスタに秘められた真実

地球惑星科学の地平を求めて(半揚稔雄)| 2023.09.20
お馴染だと思っているはずの地球や宇宙も,自然科学の目で見ると実に多様な顔を見せてくれます.この連載では,地球を中心とした様々な対象や現象について,最近の知見をもとに改めて解説します.

(毎月中旬更新予定)

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小惑星帯で最大の天体,準惑星ケレス (直径 $952\,\t{km}$) に次ぐ大きさをもつ小惑星ベスタは,太陽系形成初期の原始惑星の姿をとどめた希少な天体と考えられているが,ハッブル宇宙望遠鏡による地球からの観測では限界があることから 2007 年 9 月に NASA は探査機ドーンを両天体の探査に向けて打ち上げた.このミッションで,ベスタの探査は 2011 年 7 月から翌年 9 月まで実施され,得られた画像や観測データから新たな事実がわかってきた.

その一方で,地球ではベスタ由来と見られる隕石が多数みつかり,その分析から太陽系形成初期の様子が解明されつつある.

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半揚稔雄(はんようとしお) 1947 年,福岡県に生まれる.その後,北海道札幌市にて子供時代を過ごす.小学校 4 年の 10 月に,ソヴィエト連邦 (現在のロシア) が「世界初の人工衛星スプートニク 1 号を打ち上げた」とのニュースに接して,宇宙に興味を覚える.以来,宇宙飛行に関心を寄せ,物理学で理学士となるも,これが高じて防衛大学校,東京大学宇宙航空研究所 (現・JAXA宇宙科学研究所) などで一貫して宇宙飛翔力学の研究に携わる.この間に,東京大学から工学博士の学位を授かる.

著書:『ミッション解析と軌道計の基礎』(現代数学社,2014 年),『惑星探査機の軌道計算入門 (改訂版)―― 宇宙飛翔力学への誘い』(日本評論社,2023 年),『入門連続体の力学』(同,2017 年),『つかえる特殊関数入門』(同,2018 年) など.