(第8回)ユーロ圏の非対称的ショックとしてのエネルギー危機と銀行システムのストレス(伊藤さゆり)
ヨーロッパの直面するエネルギー危機| 2023.07.12
2022 年 2 月、ロシアがウクライナに侵攻したことにより、世界的にエネルギー価格が上昇する事態となりましたが、その中でも最も深刻な影響を受けているのがヨーロッパです。エネルギー危機に直面し大混乱に陥っているヨーロッパは、今後も脱炭素化・EV化を進めていくことができるのでしょうか。また深刻なインフレや財政・金融の問題にも注目が集まります。4名の EU 研究者が読み解いていきます。
(全 10 回の予定)
抑えられたエネルギー危機のGDPへの影響
エネルギー危機は、ユーロ圏のコロナ禍からの景気回復にブレーキを掛けた。ロシアからの輸入におよそ 4 割を依存してきた天然ガスの需要期にあたる 22 年 10〜12 月期、23 年 1〜3 月期の実質 GDP はともに前期比マイナス 0.1%、前期比年率ではマイナス 0.5%、マイナス 0.4%だった。2 四半期連続のマイナス成長、これは「テクニカル・リセッション (景気後退)」とみなされる状況だ。
伊藤さゆり (株)ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本興業銀行(現みずほフィナンシャル・グループ)を経てニッセイ基礎研究所入社。早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了。早稲田大学商学学術院非常勤講師、21世紀政策研究所研究委員兼務。日本EU学会理事。近書に『英国のEU離脱とEUの未来』(共著、日本評論社)、『沈まぬユーロ---多極化時代における20年目の挑戦』(共著、文眞堂)。