(第16回)小惑星,加熱の謎

地球惑星科学の地平を求めて(半揚稔雄)| 2023.08.22
お馴染だと思っているはずの地球や宇宙も,自然科学の目で見ると実に多様な顔を見せてくれます.この連載では,地球を中心とした様々な対象や現象について,最近の知見をもとに改めて解説します.

(毎月中旬更新予定)

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隕石の研究を通して,小惑星は太陽系形成の初期の段階で高温の状態に達していたと考えられている.その熱源にはこれまで放射性核種の崩壊に伴う熱と考えられてきたが,そのような熱源だけでは不十分なことが分ってきた.ほとんどの天体の表面に残る多数のクレーターから推測して,低密度の小惑星が形成された直後に互いに衝突して加熱されたとする証拠が見つかり,新たな熱源に小惑星同士の衝突が考えられるようになった.

岩石質天体における熱の発生とその行方

これまで小天体を温める熱源として,一般には,天体内部に含まれる放射性核種の崩壊熱が考えられてきた.この場合,半径 $r$ の球体からの熱散逸を考えるとき,その体積に対する表面積の比率は $4\pi r^2/(4\pi r^3/3)=3/r$ となり,半径が大きくなると表面積の比率が小さくなる.したがって,天体内部に発生した熱が地表面から輻射熱として失われるとき,小さい天体ほど放射量が多く冷えやすいのに対し,大きい天体ほど放射量が少なく冷えにくいという特徴があらわになる.

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半揚稔雄(はんようとしお) 1947 年,福岡県に生まれる.その後,北海道札幌市にて子供時代を過ごす.小学校 4 年の 10 月に,ソヴィエト連邦 (現在のロシア) が「世界初の人工衛星スプートニク 1 号を打ち上げた」とのニュースに接して,宇宙に興味を覚える.以来,宇宙飛行に関心を寄せ,物理学で理学士となるも,これが高じて防衛大学校,東京大学宇宙航空研究所(現・JAXA宇宙科学研究所)などで一貫して宇宙飛翔力学の研究に携わる.この間に,東京大学から工学博士の学位を授かる.

著書:『ミッション解析と軌道設計の基礎』(現代数学社,2014 年),『惑星探査機の軌道計算入門 ―― 宇宙飛翔力学への誘い』(日本評論社,2017 年),『入門連続体の力学』(同,2017 年) ,『つかえる特殊関数入門』(同,2018 年) など.