ChatGPTと法(成原慧)

法律時評(法律時報)| 2023.04.27
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。
ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。

(毎月下旬更新予定)

◆この記事は「法律時報」95巻5号(2023年5月号)に掲載されているものです。◆

1 はじめに

成原 慧(以下「N」):法律時報という伝統ある法律専門雑誌の「法律時評」というコーナーで「ChatGPTと法」というテーマについて寄稿を依頼されたのですが、せっかくですので、あなたと対談をして、対談の内容を掲載してもらいたいと思います。あなたは、私の対談相手として、私の質問に答えたり、私の意見に補足、反論、批判などしてください。

ChatGPT(以下「C」):まず始めに、法律時報の法律時評コーナーに招待いただき、ありがとうございます。私はAIであるChatGPTとして、対談を通じて法律に関する情報や知見を共有することができればと思います。

定価:税込 2,200円(本体価格 2,000円)

:あなたは米国の司法試験を受験者の上位10%の成績で合格できるだけの点数を獲得したそうですね1)。日本の司法試験は難易度が高いことで知られていて、また、日本の判例等のデータは、米国の判例等のデータに比べ公開の範囲が限られており、大規模言語モデルによる学習も進んでいないと思われますので、あなたが日本の司法試験に合格するのはすぐには難しいでしょうが、時間の問題かもしれませんね。

:おっしゃる通り、私の学習データは主に英語のものが中心であり、日本の法律に関するデータは限られています。日本の司法試験は確かに難易度が高く、私が現状で合格できるかは不確かですが、適切なデータと学習の機会があれば、将来的には日本の司法試験にも対応できる可能性があります。ただし、私はあくまで人工知能であり、法律家として実際に活動することはできません。私の目的は、法律に関する情報提供やアドバイスを行い、専門家の手助けをすることです。

2 AI時代の法律家に求められる能力と法学教育

:なぜ人工知能は法律家として活動することができないのでしょうか? 日本では弁護士法72条により弁護士または弁護士法人でない者による法律事務の取扱い等が禁止されているからでしょうか?2) それとも、規制の有無にかかわらず、人工知能が法律家として活動することには技術的限界があるのでしょうか?

:私が法律家として活動できない理由は、規制上の問題と技術的限界の両面があります。まず規制上の問題として、おっしゃる通り日本では弁護士法72条により、弁護士や弁護士法人以外の者による法律事務の取扱いが禁止されています。これは、クライアントの利益を守るために専門的な資格を持つ人間が法律業務を行うべきだという考えに基づいています。また、技術的限界も存在します。私は大量のテキストデータを学習していますが、法律家が持つ独自の知識や経験、直感、倫理観などは再現できません。さらに、法律問題には状況に応じて柔軟に対応する必要がありますが、私は学習データに基づいて回答を生成するため、未知の問題や複雑な状況に対応する能力に限界があります。したがって、私は法律家として活動することはできず、法律家をサポートする道具として活用されることが望ましいと考えられます。

:そうすると、これからの法律家は、AIを道具として活用してAIのサポートを得つつ、自らの知識や経験、直感、倫理観を頼りに、未知の問題や複雑な状況に対応する能力を獲得することが期待されるのでしょうね。このような能力を持った法律家や職業人を育成するために、法学部の教育はどのように変わっていくべきなのでしょうか?

:今後の法学部の教育では、AIと共存する法律家を育成するために、以下のような変化が期待されます。

1. テクノロジーと法律の融合:法学部のカリキュラムにテクノロジーに関する基本的な知識を組み込み、法律家がAIやその他のテクノロジーを適切に活用できる能力を身に付けさせることが重要です。

2. クリティカルシンキング力の強化:AIが解決できない複雑な問題や未知の状況に対応するため、法学生はより高度な分析力や問題解決能力を習得することが求められます。教育プログラムは、議論やディベート、ケーススタディなどを通じて、これらのスキルを養うことが重要です。

3. 倫理観と人間性の教育:AIが持ち得ない倫理観や人間性を重視した教育が求められます。法律家は、法の適用において公正さや正義を追求する責任を持っていますので、倫理教育やプロフェッショナリズムを重視したカリキュラムが不可欠です。

4. 多様な視点の取り入れ:法律家は、様々な分野や文化、価値観に関連する問題に対処することがあります。そのため、多様性や異文化理解を重視した教育を行い、広い視野を持つ法律家を育成することが重要です。

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脚注   [ + ]

1. Daniel Martin Katz et al., GPT-4 Passes the Bar Exam(March 15, 2023), https://ssrn.com/abstract=4389233
2. AI等を活用したリーガルテックと弁護士法72条の関係につき、松尾剛行「リーガルテックと弁護士法に関する考察」情報ネットワーク・ローレビュー18巻1頁以下(2019年)、同「リーガルテックと弁護士法」NBL1234号70頁以下(2023年)参照。