序文(特別企画:親子を支援する――トラウマと愛着の視点から)(編:山下洋)

特別企画から(こころの科学)| 2023.04.17
心理臨床、精神医療、教育、福祉等の領域で対人援助にかかわる人、「こころ」に関心のある一般の人を読者対象とする学術教養誌「こころの科学」。毎号の特別企画では、科学的知見の単なる解説ではなく、臨床実践に基づいた具体的な記述を旨としています。そうした特別企画の一部をご紹介します。

(毎月中旬更新予定)

◆本記事は「こころの科学」229号(2023年5月号)の、山下洋編「特別企画:親子を支援する――トラウマと愛着の視点から」に掲載されている序文です。◆

トラウマが私たちに与える影響は生物・心理・社会の諸相に幅広く、人生行路の長きにわたる。今ある人の心身に体現されている困難の背後には、ともに体験している人から、対処と回復の過程にかかわる人まで、個人を超えた多様な関係性が織りなす時空間が広がっている。その始まりには私たちが安全に生まれ育つために不可欠な養育をめぐる関係性の場所がある。トラウマを/から生じた逆境には、互いに守り癒そうと寄り添う人の存在/不在があり、その場所は回復と同時に逆境の世代間伝達の場ともなりうる。ライフコースと世代間伝達を視野に入れた「複雑性トラウマ」や「小児期逆境体験」の概念は、いずれもこころの健康にとって不可欠な養育環境・関係性を、今ここでの問題として扱う臨床の営みへとつながる。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について

この号の記事をすべて読むには
雑誌購入ページへ