『これだけは知っておきたい数学ビギナーズマニュアル(第2版)』(著:佐藤文広)

一冊散策| 2023.02.06
新刊を中心に,小社刊行の本を毎月いくつか紹介します.

このような時代に数学を学ぶことは,数学自体の研究を志すにせよ,応用の分野で数学の知識を生かすにせよ,とてもエキサイティングなことではないでしょうか.

数学は,その真理性への強い信頼観の故かもしれませんが,しばしば,もはや研究することがあまり存在しない硬直した学問というイメージを持っている人が多いような気がします.しかし,数学は今も生き生きと成長・変化している生命体のような存在なのです.同時に,数学は人間による文化的営みですから,それに強い関心を抱く人々の存在のみを生命力としています.ギリシアにおける論証数学の発生から数えても 2500 年におよぶ歴史をもつ数学という文化の継承・発展は,もっとも抽象的な数学研究から自然科学・技術への応用,数学教育に至るまでの広い分野で今日も行なわれています.その作業にともに参加してくれる人々をみなさんの中から迎えたい,というのが大学で数学の授業に携わる私たちの抱いている希望なのです.

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このように興味深い数学なのですが,残念ながらあこがれているだけではその真の魅力に触れることはできません.数学への夢はしっかり持ちながらも,着実に歩み出すことにしましょう.勉強のスタートにあたって,次の言葉を紹介しておきます.

「『頭のよさ』に自信のない人に.必要な才能は『考え続ける能力』であり,例えば知能指数などは直接の関連はないようだ.また諸君が仲間について『あいつは頭がよいから』と思っているのも,実はその人が数学にどっぷり浸って考えつづけた経験が深いため諸君より数学的センスが発達していることの表われである場合が多い.いずれにせよ努力しないで頭のよさを云々しても意味がない.」

(伊原康隆 (京都大学,東京大学名誉教授) 「数学を勉強しようという人に,思いつくままに」,東京大学理学部数学科五月祭文集(1973),pp.63–66 より)

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