(第3回)中国四川大地震の復興支援プロジェクトとこころのケア

紛争・災害と子どものこころのケア――世界の精神保健の現場から(田中英三郎)| 2022.12.02
2022年ロシアによるウクライナ侵攻は日本に住む私たちにも大きな衝撃を与えました。また、新型コロナウイルスのパンデミックや自然災害など、私たちの日常を一変させる出来事がいつやってくるかは予想もつきません。こういった出来事はすべての人々のこころに暗い影を落としますが、特に子どものこころへの影響は計り知れません。この連載では、世界と日本の現場から、子どもたちのこころの健康を保つためにどんなことがされているのか、レポートしていきます。

(毎月上旬更新予定)

今月は、一枚の写真(写真1)を紹介するところからはじめたいと思います。

写真1 四川大地震発災5年後の被災地

この写真は、2013年5月に中国四川省綿陽市北川チャン族自治県で私が撮影したものです。ここにはかつて、小学校がありました。しかし、2008年にこの地で起こった四川大地震により、校舎は完全に破壊されました。地震が発生したのが平日の昼過ぎであったため、多くの児童が一瞬で生き埋めとなり命を落としたのです。この巨大災害の被害はすさまじく、中国政府の発表によると、死者6万9227人、行方不明者1万7923人を数えました。そのため、中国国内のみならず、世界各国の注目が被災地に向けられました。日本は、地震直後から国際緊急援助隊の救助チームを被災地に派遣し人命救助にあたり、それに引き続いて医療チームが四川大学華西病院で発災後3週間目まで活動を行いました。

このような急性期の支援活動が落ち着いてくると、甚大な被害を受けた被災者の精神健康に関心が向けられるようになります。

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田中英三郎(たなか・えいざぶろう)
2001年愛媛大学医学部を卒業、精神科医師。ユニバーシティカレッジロンドン(UCL)等で社会疫学を研究、公衆衛生学修士、博士(医学)。国立国際医療研究センター、国境なき医師団、都立梅ヶ丘病院、兵庫県こころのケアセンター等を経て、2021年よりJICAヨルダン事務所・ヨルダン保健省精神保健政策アドバイザーを務めている。