最高裁判所の少数意見制度――その展開と意義(見平 典)(特集:憲法訴訟の反対意見を読み解く)

特集から(法学セミナー)| 2022.04.25
毎月、月刊「法学セミナー」より、特集の一部をご紹介します。

(毎月中旬更新予定)

◆この記事は「法学セミナー」808号(2022年5月号)に掲載されているものです。◆

特集:憲法訴訟の反対意見を読み解く

本特集では、憲法訴訟において合憲判決が下されたものの、
そこで述べられた反対(少数)意見の意義・思考方法を読み解きます。
判例・通説といった基礎的知識を学修しつつ、反対(少数)意見をも読み解くことで、
応用的な論理力・多様な考え方を身につけていただきたいと思います。
さらに進んで、反対意見が多数となり違憲判決が下される余地はなかったのか、
今後の社会情勢の変化と判例変更の可能性についても、思いをいたしてみましょう。

――編集部

1 はじめに

勉強熱心な法学セミナー読者の皆さんは、最高裁判所の憲法事件を学ぶにあたり、「判例」となる多数意見を丁寧に読み込んでいることと思います。それでは、少数意見についてはどうでしょうか。学ぶことが多すぎて、少数意見にまで目を向ける余裕がないという声も上がりそうです。しかし、多数意見を補足したり批判したりする少数意見にも目を向けることにより、多数意見をより深く多面的に理解することが可能になります。また、少数意見は、今後の判例の展開を見通す上でも有用であり、弁護士が訴訟戦略を練る上での重要な情報源として機能することもあります。

本特集は、最高裁判所の主要な憲法事件における少数意見を検討することを通して、読者の皆さんに、実際にこうした少数意見の意義・機能を実感して頂くことを目的としています。本稿に続く各稿を通して、読者の皆さんは、少数意見を手掛かりとして判例を多面的に理解し、今後の判例の展開についてより深い見通しを得ることができるでしょう。

もっとも、少数意見の意義は、判例の理解とその方向性の予測にとって有用であることに止まりません。少数意見は多岐にわたる意義を有しており、司法の国民的基盤の形成につながるとの指摘もあります。その一方で、少数意見に対して消極的な見方もあり、そうした見方の方が最高裁判所において有力な時期もありました。そこで、本稿では、本特集の序章として、少数意見制度そのものを取り上げ、その意義と展開を中心に検討したいと思います。

以下では、まず最高裁判所の少数意見制度の概要について確認し(2)、続いて、この制度のこれまでの展開・動向について概観します(3)。その後、少数意見制度の意義について検討し(4)、最後に本稿の議論をまとめます(5)。

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