同氏合意による婚姻・戸籍作成の区別の合憲性:東京地裁令和3年4月21日判決(木村草太)

判例時評(法律時報)| 2021.07.30
一つの判決が、時に大きな社会的関心を呼び、議論の転機をもたらすことがあります。この「判例時評」はそうした注目すべき重要判決を取り上げ、専門家が解説をする「法律時評」の姉妹企画です。
月刊「法律時報」より掲載。

(不定期更新)

◆この記事は「法律時報」93巻9号(2021年8月号)に掲載されているものです。◆

東京地裁令和3年4月21日判決

1 はじめに─第二次夫婦別姓訴訟・婚姻確認訴訟

民法750条は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定める。以下、「夫又は妻の氏を称する」意思を夫婦が互いに持つことを「同氏合意」と呼ぶことにする。民法学説の中には、同氏合意は婚姻の成立要件ではないとするものがある(我妻栄『親族法』〔有斐閣、1961年〕78頁)。もしそうなら、同氏合意を欠いても婚姻は成立する。この点について、2021(令和3)年4月21日、東京地裁は注目すべき判決(以下、本判決)を出した。事案は次のようなものだ。

法の適用に関する通則法24条によれば、日本人同士が外国で婚姻する場合、「婚姻の成立は,各当事者につき,その本国法」つまり日本法「による」が、「婚姻の方式は,婚姻挙行地の法による」。米国ニューヨーク州在住の原告X1とX2は、夫婦同氏を除く、婚姻の全効果を享受する意思を持ち、同州で婚姻を挙行し、婚姻証書を得た。

原告らは、本籍地である千代田区長に婚姻証書謄本を提出した。原告らが、「婚姻後の夫婦の氏」につき「夫の氏」と「妻の氏」双方にレ点を付した婚姻の届書を提出したところ、民法750条・戸籍法74条1項違反を理由に受理されず、婚姻の戸籍も作成されなかった。

そこで、X1・X2は婚姻が成立していることを前提に、国に対し、A:主位的請求として、戸籍による婚姻関係の公証を受け得る地位にあることの確認、B:予備的請求として、B1:国が作成する戸籍以外の方法による公証を受け得る地位の確認、B2:公証規定を設けないという立法不作為の憲法24条違反を理由とした国賠請求を求め提起した。これは第二次夫婦別姓訴訟と呼ばれる一連の申立・訴訟の一つだ(https://bessei.net/参照)。

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