(第10回)モリアーティ

人文的な数学の話(井ノ口順一)| 2021.07.14
文学を読んでいても,人文・社会系の本を読んでいても,ついつい数学の目で見てしまい,いつの間にか話が数学になってしまいます.意外や意外,数学の話題が溢れているのです.数学者になってしまったばかりに気になってしまうことを日常生活のひとこまや読書を通じてご紹介していきます.ときどきはディープな話題に迷い込むかもしれません.
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シャーロック・ホームズの探偵潭をお読みになられた読者は少なくないと思います.私が最初に読んだのは小学生のときに児童向けに編集された『シャーロック・ホームズの冒険』(武田武彦〔訳〕旺文社,1969) です.当時は年に一度,旺文社の児童書フェア (旺文社ジュニア図書館) が小学校に届き,学年別の推薦図書リストを見て注文したのです.注文書をのり付けして封筒を作り,中に代金を入れました (おつりのないよう注意!昭和の思い出).その後,学研から刊行されていた『5 年の学習』(か『6 年の学習』) に児童向けに翻案された「ルパン対ホームズ」が連載されていたのを読みました (しかしこれはルブラン作だと後で知ります).

それっきり,ホームズの本は読まずにいました.大学生のころ,NHK で「シャーロック・ホームズの冒険」(グラナダ TV 制作)というドラマが放送され,同じ寮に住んでいた友人たちと夢中になって見ていました.これを機会に新潮文庫 (延原謙訳) を全部,買いそろえました.ホームズ潭を読み進める上で『シャーロック・ホームズの履歴書』(河村幹夫,講談社現代新書,1989) は大変役に立ちました.2020 年にも『初歩からのシャーロック・ホームズ』(北原尚彦,中公新書ラクレ)が出版されています.

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井ノ口順一(いのぐち・じゅんいち)
1967 年千葉県銚子市生まれ.東京都立大学大学院理学研究科博士課程数学専攻単位取得退学.現在,筑波大学数学域教授.
教育学修士(数学教育), 博士(理学).専門は可積分幾何・差分幾何.
著書に『リッカチのひ・み・つ---解ける微分方程式の理由を探る』(日本評論社, 2010),『どこにでも居る幾何---アサガオから宇宙まで』(日本評論社, 2010),『曲線とソリトン』(朝倉書店, 2010),『常微分方程式NBS』(日本評論社,2015),『初学者のための偏微分∂を学ぶ』(現代数学社,2019)等.
日本カウンセリング・アカデミー修了, 星空案内人(準案内人), 日本野鳥の会会員.