(第11回)統計的有意差の誤用 — 有意差の差を効果の差の判定に使ってはいけない
現実を「統計的に理解する」ための初歩の初歩(麻生一枝)| 2020.09.08

(毎月中旬更新予定)
$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$
久しぶりに,皆さん自身で考えていただくことから始めよう.前回に続き,例に使うのは,ニワトリの餌に加えるサプリメントの効果を調べる実験である.第 8 回の $p$ 値の定義や前回(第 10 回目)の $p$ 値と効果量の話を参考に,つぎの実験結果の解析と結論に納得がいくかどうか考えてみてほしい.
サプリメント A とサプリメント B では,ニワトリの体重増加に及ぼす効果が違うかどうかを調べるために,つぎのような実験を行った.まず,母集団からランダムに 30 羽のニワトリのヒナを選んだ.つぎに,その 30 羽をランダムに 10 羽ずつのグループに分け,対照群には標準食を,実験群 A には標準食とサプリメント A を,実験群 B には標準食とサプリメント B を与えて育てた.そして,40 日後に体重増加量を測定した.
