(第6回)コロナ危機とユーロの国際的な地位(伊藤さゆり)

コロナ危機とEUの行方| 2020.08.28
2020年に入って突如世界を席巻し始めた新型コロナウイルス感染症は,2020年3月11日にはWHOによってパンデミック宣言され,依然として予断を許さない状況が続いています.このコラムでは,さまざまな立場のEU研究者が,「コロナ危機下のヨーロッパ」がどう動くのか,どこへ向かうのかについて読み解いていきます.(全12回の予定)

8 月に出揃った 4〜6 月期の実質 GDP は、コロナ禍によるユーロ圏経済の打撃が、とりわけ大きかったことを浮き彫りにした。前期比年率の GDP は、日本のマイナス 27.8%、米国のマイナス 32.9%を大きく上回るマイナス 40.9%もの落ち込みだった。

経済情勢の厳しさにも関わらず外国為替市場ではユーロ高が進んでいる。主要な貿易相手国通貨に対する為替相場を加重平均した名目実効為替相場は年初来のボトムとなる 2 月 19 日の 95.6 から直近 (8 月 18 日) には、102.0 まで上昇している (図表)。

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伊藤さゆり (株)ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本興業銀行(現みずほフィナンシャル・グループ)を経てニッセイ基礎研究所入社。早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了。早稲田大学大学院商学研究科非常勤講師兼務。日本EU学会理事。著書に『EU 分裂と世界経済危機 --- イギリス離脱は何をもたらすのか』(単著、NHK出版新書)、『EU は危機を超えられるか --- 統合と分裂の相克』(共著、NTT出版)、『英国のEU離脱とEUの未来』(共著、日本評論社)。