大規模災害と障害者や高齢者の避難(花田昌宣)

特集/避難所に入れない?!―3.11に避難所について考える| 2020.03.11
特集/避難所に入れない?!―3.11に避難所について考える
日本は地震、台風、豪雨などの災害が多く、「災害大国」といわれています。
2019年の台風19号(令和元年東日本台風)では、猛烈な風と大雨による甚大な被害が出ました。しかし、SNS上では、「避難所への入所を断られた」という投稿が散見され、議論となりました。
災害が起こった場合、避難所は避難したい人を十分に受け入れることができるでしょうか。本特集では避難所のあり方について考えます。

1 避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針

2013(平成25)年8月、災害対策基本法の改正とともに、国(内閣府防災担当)は「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」を出し、避難行動要支援者名簿を活用した実効性のある避難支援に取り組むよう市町村に準備と活用を求めた(また災害救助法においても福祉避難所に関する記載が見られるが、救助基準において一般の避難所運営以上の費用がかかっても加算可能と記されているにすぎない)。

これは、2006(平成18)年3月の「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を示していたものの活かされておらず、2011(平成23)年の東日本大震災の際には、障害者の死亡率が全体平均の2倍を上回ったこと、死亡者のうち6割が65歳以上の高年齢者であったことから、災害時要援護者名簿の作成の義務付け、防災・減災関係者への情報提供、災害発生時に本人同意なしに活用できることなどを進めるために示された指針であった。

2 障害者や高齢者の避難先は

さて、障害者、高齢者など要支援者たちは発災後、どこに避難するのか。実は「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」には具体的には記されていない。各地域での個別支援計画においても避難先が明示されていることは少ない。

通常、福祉避難所とは、主に障害者、難病患者、乳幼児や妊産婦及びその家族、認知症のある人や要介護の高い高齢者など、避難生活において特に配慮が必要な人々が滞在することを想定した避難所のことを指す。そこでは、抱えている困難に応じて生活に必要な支援を受けることができるとされている。

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花田昌宣(はなだ・まさのり)
1952年生まれ。熊本学園大学社会福祉学部教授。同大学水俣学研究センター長。専門は社会政策学。社会福祉法人くまもと障害者労働センター理事長。2016年4月の熊本地震の際、障害者を積極的に受け入れた避難所を運営するとともに、被災地障害者センターを設立し、被災した障害者たちの支援に取り組んだ。著書に『水俣学講義』(日本評論社)など。