(第5回)小さなサンプル・サイズの問題点 — ランダム化で生まれる偏り

現実を「統計的に理解する」ための初歩の初歩(麻生一枝)| 2020.03.13
私達が生きる現実社会の多くの問題の理解には,種々の数値の測定や観察とそれを「統計的に処理する」作業が欠かせません.毎日のニュースでもありとあらゆる機会に「数値」が出てきますが,その意味をきちんと考えたり信憑性を疑うことは、必ずしもなされていないようです.この連載では,誰でも知っておいてほしい統計についての基本的な考え方や, 統計にまつわる誤解や陥りやすい罠を紹介していきたいと思います.(全12回の予定)

(毎月中旬更新予定)

サンプル・サイズの小さい社会調査

$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

「サンプル数の少ない($=$サンプル・サイズの小さい)世論調査や社会調査は信用するな」という言葉は、誰しもどこかで聞いたことがあるだろう。そして、その理由もおそらく、わかっているはずだ。

人の意見はさまざまで、異なるのがふつうである。たとえ母集団からランダムに選んだとしても、十分な数の人に尋ねなかったら、偏った意見だけを($=$偶然)拾ってしまう可能性がある。そして、それにもとづいた結論は偏ったものになる。たくさんの人に尋ねることで、偶然による意見の偏りを回避し、より真実に近い、より信憑性のある結果を得ることができる。

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麻生一枝 長浜バイオ大学准教授.お茶の水女子大学理学部数学科卒業,オレゴン州立大学動物学科卒業,プエルトリコ大学海洋学科修士,ハワイ大学動物学Ph.D. 専門は動物行動生態学.「統計や実験デザインの理解は健全な科学研究に必須である」という信念のもと,これらの教育の普及に熱意を持って取り組む.著訳書に『科学でわかる男と女になるしくみ』 (SBクリエイティブ),『実データで学ぶ,使うための統計入門 ---データの取りかたと見かた』(共訳,日本評論社), 『生命科学の実験デザイン』(共訳,名古屋大学出版会)など.