(第13回)最後の公判:最終弁論および裁判長の説示
渋谷重蔵は冤罪か?―19世紀、アメリカで電気椅子にかけられた日本人(村井敏邦)| 2019.09.26

(毎月下旬更新予定)
1889年12月5日、陪審員による評議前の最後の公判において、弁護人と検察官による最終弁論と、これに引き続いて裁判長による陪審員への説示が行われた。
弁護人と検察官の最終弁論は、記録には編綴されていない。裁判長の説示において、両当事者の主張が要約されているので、それを見ることによって、最終弁論の内容を推察する以外にない(ただし、刑の言渡し後、弁護人からのnew trial申立てにおいて、両当事者の主張が記載されているので、そこで確認することができる)。
以下、少し長くなるが、裁判の全体像を掴みやすくするため、裁判長の説示全体を1回で掲載する。
第1級殺人罪について
裁判長は、起訴された第1級殺人罪がどんな罪かの説明から説示を始めた。