(第13回)最後の公判:最終弁論および裁判長の説示

渋谷重蔵は冤罪か?―19世紀、アメリカで電気椅子にかけられた日本人(村井敏邦)| 2019.09.26
日本開国から24年、明治の華やかな文明開化の裏側で、電気椅子の露と消えた男がいた。それはどんな事件だったのか。「ジュージロ」の法廷での主張は。当時の日本政府の対応は。ニューヨーク州公文書館に残る裁判資料を読み解きながら、かの地で電気椅子で処刑された日本人「渋谷重蔵」の事件と裁判がいま明らかになる。

(毎月下旬更新予定)

1889年12月5日、陪審員による評議前の最後の公判において、弁護人と検察官による最終弁論と、これに引き続いて裁判長による陪審員への説示が行われた。

弁護人と検察官の最終弁論は、記録には編綴されていない。裁判長の説示において、両当事者の主張が要約されているので、それを見ることによって、最終弁論の内容を推察する以外にない(ただし、刑の言渡し後、弁護人からのnew trial申立てにおいて、両当事者の主張が記載されているので、そこで確認することができる)。

以下、少し長くなるが、裁判の全体像を掴みやすくするため、裁判長の説示全体を1回で掲載する。

第1級殺人罪について

裁判長は、起訴された第1級殺人罪がどんな罪かの説明から説示を始めた。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について
ページ: 1 2