ハマり続けるのが人生さ――生きづらさとアディクション(伊藤絵美)(特別企画:行動のアディクション――「ハマる」を考える)

特別企画から(こころの科学)| 2019.04.25
心理臨床、精神医療、教育、福祉等の領域で対人援助にかかわる人、「こころ」に関心のある一般の人を読者対象とする学術教養誌「こころの科学」。毎号の特別企画では、科学的知見の単なる解説ではなく、臨床実践に基づいた具体的な記述を旨としています。そうした特別企画の一部をご紹介します。

(毎月中旬更新予定)

◆本記事は「こころの科学」205号(2019年5月号)の、蒲生裕司・宮岡 等=編「特別企画:行動のアディクション――「ハマる」を考える」に掲載されているエッセイです。◆

アディクション(依存症、嗜癖)といえば、アルコールや違法薬物の問題を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし近年、ギャンブルやインターネットゲーム、万引き、痴漢といった行動の問題を、新たにアディクションの一種として捉える見方が強まっています。こうした行動はどこまでが正常で、どこからが病気なのでしょうか。どのアディクションのどの側面を、医療の対象とすべきなのでしょうか。本特別企画では、アディクション支援の最先端で活躍する専門家の方々に、現時点での標準的な知見、支援のあり方などをご解説いただきました。

(「こころの科学」編集部)

*スキーマ療法とアディクション

筆者は民間のカウンセリング機関を運営する臨床心理士である。もともと認知行動療法(CBT)を専門にしていたが、設立以来、当機関の初回面接までの待ち時間が徐々に長くなっており(今だと半年以上)、それに応じるかのように、単なる(という言い方もよくないが)抑うつや不安を訴える人よりも(そういう人は半年も待っていられないし、待つ必要もない)、「なにがなんだかわからないけれども生きるのがつらい」という人が来談することが増えてきた。同時に、CBTが発展したスキーマ療法というセラピーに10年ほど前に出会い、それが「生きづらさ」に焦点を当てる統合的なアプローチで、当機関に来談するクライアント層にぴったりくることから、また筆者らがスキーマ療法に関する翻訳書や著書を立て続けに出したことから、最近ではCBTよりスキーマ療法を希望して来談する人が激増しており、具体的な症状より「生きづらさ」に焦点を当てたセラピーを実施することが格段に多くなった。

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