(第9回)ロスト(喪失)――離婚等(人事訴訟・控訴審)

ただいま調査中! 家庭裁判所事件案内(高島聡子)| 2024.06.04
2024年度前期朝ドラ『虎に翼』のモデルとなった三淵嘉子が、その設立に関わることになる家庭裁判所。戦後まもなく産声を上げた、社会的弱者のための裁判所では、令和の今、どんなことが起きているのでしょうか? そして「家庭裁判所調査官」とは、どんなお仕事?
普段は手続非公開のベールに隠れている“中の人”が、リアルな現場の点景をお伝えします。
(事件はすべて、家裁に係属する事件の特徴を踏まえて創作した架空のものです)

(毎月上旬更新予定)

電話

「総括、調査室の借用依頼です。高裁から」

内線電話が転送されてくる。調査官の調査では、他庁の管轄区域に当事者が住んでいる場合、最寄りの裁判所の調査室を使わせてもらうことがあり、その窓口は私の仕事だ。電話をかけてきたのは高裁で抗告事件の調査を担当している知り合いの調査官だった。

家裁で判断が示された後、その内容に不服があれば、高等裁判所に抗告を申し立てることができるが、書面審理が中心の高裁段階でも調査官調査を行うことがある。

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高島聡子(たかしま・さとこ)
神戸家庭裁判所姫路支部総括主任家庭裁判所調査官。
1969年生まれ。大阪大学法学部法学科卒業。名古屋家裁、福岡家裁小倉支部、大阪家裁、東京家裁、神戸家裁伊丹支部、京都家裁、広島家裁などの勤務を経て2023年から現職。現在は少年、家事事件双方を兼務で担当。
訳書に『だいじょうぶ! 親の離婚』(共訳、日本評論社、2015年)がある。