(第12回・最終回)国際保健の現場で働くということ――私たちのこころの健康

紛争・災害と子どものこころのケア――世界の精神保健の現場から(田中英三郎)| 2023.09.04
2022年ロシアによるウクライナ侵攻は日本に住む私たちにも大きな衝撃を与えました。また、新型コロナウイルスのパンデミックや自然災害など、私たちの日常を一変させる出来事がいつやってくるかは予想もつきません。こういった出来事はすべての人々のこころに暗い影を落としますが、特に子どものこころへの影響は計り知れません。この連載では、世界と日本の現場から、子どもたちのこころの健康を保つためにどんなことがされているのか、レポートしていきます。

(毎月上旬更新予定)

約1年にわたり「紛争・災害と子どものこころのケア」をテーマに、さまざまな話題を提供してきたこの連載も今月がいよいよ最後回になります。

これまで世界の子どものこころの健康を守るためになされている取り組みや私の活動経験をご紹介してきました。また、子どものこころの健康が、多層的な要因によって規定されていることもお伝えしてきました。例えば、子どもが生活する場(家庭)の安全と安定、学びそして遊ぶ場所(学校)の保障、子どもを取り巻く人々(親、兄弟姉妹、親戚家族、友人、教師、スクールカウンセラー、校長、その他地域の人々)との関係などは、子どものこころの健康に大きな影響を与えます。こういった環境を整えていくことで、多くの子どもたちは精神的に健康に発達していくことができます。一方、例えば、親が精神的に参ってしまっていたり、何か問題を抱えてしまっていたりする場合は、子どものこころの健康にも悪影響が出てきます。

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田中英三郎(たなか・えいざぶろう)
2001年愛媛大学医学部を卒業、精神科医師。ユニバーシティカレッジロンドン(UCL)等で社会疫学を研究、公衆衛生学修士、博士(医学)。国立国際医療研究センター、国境なき医師団、都立梅ヶ丘病院、兵庫県こころのケアセンター等を経て、2021年よりJICAヨルダン事務所・ヨルダン保健省精神保健政策アドバイザーを務めている。