テレワークは生産性を上げるのか?—ランダム化比較試験による実証

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2023.09.26
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Atkin, D., Schoar, A. and Shinde, S.(2023) “Working from Home, Worker Sorting and Development,” NBER Working Paper, 31515.$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}\def\bi#1{\boldsymbol{#1}}$

菊池信之介

はじめに

コロナ禍をきっかけに、在宅勤務あるいはテレワークが拡大している。たとえば、東京都が行った調査によれば、東京都内の企業では、2023 年 7 月時点で約 45% の企業がテレワークを実施していると回答している1)。生産性への負の影響を懸念する企業がオフィスへの出社を義務化したり、在宅勤務を推進する企業がオフィスを縮小したりと、在宅勤務に関する話題は現在も尽きることがない。在宅勤務はよりフレキシブルな働き方を実現するメリットが明確にある一方で、企業が懸念する生産性への影響はまだあまりよくわかっていなかった。本稿で紹介する Atkin, Schoar and Shinde (2023) は、ランダム化比較試験 (RCT) を通じて「在宅勤務は生産性を低下させるのか? 」という問いに実証的に答えている。

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脚注   [ + ]

1. 調査対象は従業員 30 人以上の企業。東京都産業労働局「テレワーク実施率調査結果 7 月」