マーケットデザインの最先端:難民再定住アルゴリズムの設計と実装

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2023.03.29
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Ahani, N., Gölz, P., Procaccia, A.D., Teytelboym, A. and Trapp, A. C. (2021a) “Dynamic Placement in Refugee Resettlement,” EC’21: Proceedings of the 22nd ACM Conference on Economics and Computation, Association for Computing Machinery, New York: 5.

$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}\def\bi#1{\boldsymbol{#1}}$

奥村恭平

経済学は難民を救えるか

2019 年末時点で、世界には約 2600 万人の難民がおり、そのうち 140 万人以上が再定住 (resettlement) を必要としている1)。再定住とは、難民が最初に保護を求めて避難した国から、彼・彼女らを受け入れることに同意した第三国へと移る手続きのことを指し、避難国で生命・自由・安全・健康その他の基本的権利が脅かされている、難民の中でも特に深刻な状況にある人々が対象とされる2)。2018 年には、8 万 1000 人の難民が再定住を申請し、そのうちの 5 万 6000 人が再定住を開始した。

従来、難民の再定住を受け入れてきた国の多くは国内のどこに各難民が受け入れられるかについてさほど注意を払ってこなかった。しかし、再定住先の環境は難民のその後に少なからぬ影響を与えることが知られている。特に再定住した難民が職に就けるか否かは影響を受けやすく、その後の経済的自立・将来計画・語学力向上などにも関わる重要な要素である。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について

脚注   [ + ]

1. UNHCR, Global Trends: Forced Displacement in 2019 (https://www.unhcr.org/flagship-reports/globaltrends/globaltrends2019/), UNHCR, Projected Global Resettlement Needs 2020 (https://www.unhcr.org/protection/resettlement/5d1384047/projected-global-resettlement-needs-2020.html).
2. UNHCR 日本「第三国定住」(https://www.unhcr.org/jp/resettlement)。