(第12回)太陽でスーパーフレアが?

地球惑星科学の地平を求めて(半揚稔雄)| 2023.04.14
お馴染だと思っているはずの地球や宇宙も,自然科学の目で見ると実に多様な顔を見せてくれます.この連載では,地球を中心とした様々な対象や現象について,最近の知見をもとに改めて解説します.

(毎月中旬更新予定)

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太陽面で発生するフレアと呼ばれる爆発現象では大小さまざまな規模のものが存在し,記録に残る中では約 $160$ 年前のものが最大規模として知られている.近年,ケプラー宇宙望遠鏡による太陽に類似した恒星の観測から,その $100$ 倍も大きい “スーパーフレア” が $5000$ 年に $1$ 回程度発生することがわかってきた.もし,実際に太陽で発生すれば人類文明は危機的状況に陥ることは必至で,実際に起こる可能性があるのかどうか,研究成果が待ち望まれている.

巨大フレアが地球環境へ及ぼす影響

フレアと $\t{CME}$ (コロナ質量放出) の発生が地球に向かい合う側で発生すると,フレアに伴う強力な電磁波が約 $8$ 分後に地球に到達し,数時間後には高エネルギー粒子が,さらに $\t{CME}$ に伴うプラズマ雲が $2\sim3$ 日後に押し寄せて来る.その結果,電磁波のうち紫外線や $\t{X}$ 線,$\gamma$ 線は上空の電離層を乱して短波通信障害 — デリンジャー現象 — を起こすが,大気に遮られて地表まではとどかない.また,高エネルギー粒子についても,地表に達することはない.

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半揚稔雄(はんようとしお) 1947 年,福岡県に生まれる.その後,北海道札幌市にて子供時代を過ごす.小学校 4 年の 10 月に,ソヴィエト連邦 (現在のロシア) が「世界初の人工衛星スプートニク 1 号を打ち上げた」とのニュースに接して,宇宙に興味を覚える.以来,宇宙飛行に関心を寄せ,物理学で理学士となるも,これが高じて防衛大学校,東京大学宇宙航空研究所(現・JAXA宇宙科学研究所)などで一貫して宇宙飛翔力学の研究に携わる.この間に,東京大学から工学博士の学位を授かる.

著書:『ミッション解析と軌道設計の基礎』(現代数学社,2014 年),『惑星探査機の軌道計算入門 ―― 宇宙飛翔力学への誘い』(日本評論社,2017 年),『入門連続体の力学』(同,2017 年) ,『つかえる特殊関数入門』(同,2018 年) など.