(第12回・最終回)サッカー日本代表に学ぶナルシシズムの克服

日本のリーダーはなぜ決められないのか――経営に活かす精神分析(堀有伸)| 2022.12.21
経営における意思決定に、深層心理はどのような影響を与えているでしょうか。この連載では、日本の文化や慣習が組織のリーダーの「決断」にどのような影響を与えているかを、MBAで学んだ精神科医が、精神分析理論等を参照しながら明らかにしていきます。

(毎月下旬更新予定)

サッカーワールドカップにおける日本の躍進

2022年にカタールで開催されたサッカーワールドカップで、予選グループEに属した日本は、ドイツ、スペインという過去に優勝を経験した2国に勝利し、トップの成績で決勝トーナメントに進むという快挙を成し遂げた。決勝トーナメント初戦では強豪クロアチアと対戦し、五分以上の展開で延長まで戦い切り、惜しくもPK戦で敗退した。

予選で勝利した2試合の前半は明らかに劣勢で、相手に先制を許す苦しい展開だった。今までの日本チームであったなら、そのまま相手に圧倒されてしまっても不思議はなかった。しかし、その多くがヨーロッパのクラブチームに所属している今回の選手たちは落ち着いていた。冷静に状況を分析し、勝つためには何が必要か、一つひとつ考えて合理的な打ち手を用意したようだ。彼らはそれを勇敢に実行し、数少ないチャンスをものにして、相手を上回る得点を挙げた。運が味方をしてくれた面もあった一方で、準備のないところには幸運も訪れない。彼らの戦い方は幸運に恵まれるのにふさわしいものだった。

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堀 有伸(ほり・ありのぶ)

精神科医。1997年に東京大学医学部卒業後、都内および近郊の病院に勤務しながら現象学的な精神病理学や精神分析学について学んだ。2011年の東日本大震災と原発事故を機に福島県南相馬市に移住し、震災で一時閉鎖された精神科病院の再開に協力した。2016年、同市内に「ほりメンタルクリニック」を開業。開業医となった後にグロービス経営大学院で学ぶ。著書に『日本的ナルシシズムの罪』(新潮新書)、『荒野の精神医学』(遠見書房)。