(第11回)SDGsとエディプス葛藤

日本のリーダーはなぜ決められないのか――経営に活かす精神分析(堀有伸)| 2022.11.21
経営における意思決定に、深層心理はどのような影響を与えているでしょうか。この連載では、日本の文化や慣習が組織のリーダーの「決断」にどのような影響を与えているかを、MBAで学んだ精神科医が、精神分析理論等を参照しながら明らかにしていきます。

(毎月下旬更新予定)

環境団体による名画への攻撃

最近、欧米の石炭火力発電に反対する環境団体が、ゴッホやモネの名画にトマトスープをかけたりマッシュポテトを投げつけたという報道が続いた。その環境団体のメンバーは、イギリス政府に化石燃料への投資をやめるように訴え、「絵画と、地球と人々の命を守ること、どちらが大切なのか」「人々は飢え、凍えて死につつある。私たちは気候をめぐる大惨事に直面している。もし将来、人類が食料を取り合う事態になるのなら、この絵画には何の価値もない」などと訴えたという1)

このニュースを聞いて、違和感や反発を抱いた人も少なくないだろう。筆者は、「環境問題が大事なのはわかるが、その憤りを絵画にぶつけるのは理解できない」と感じた。同時に、欧米の社会が抱える分断や葛藤の激しさと苦悩、それと共存しつつ国際社会で生き抜いている彼らのタフさやバイタリティについても連想した。

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脚注   [ + ]


堀 有伸(ほり・ありのぶ)

精神科医。1997年に東京大学医学部卒業後、都内および近郊の病院に勤務しながら現象学的な精神病理学や精神分析学について学んだ。2011年の東日本大震災と原発事故を機に福島県南相馬市に移住し、震災で一時閉鎖された精神科病院の再開に協力した。2016年、同市内に「ほりメンタルクリニック」を開業。開業医となった後にグロービス経営大学院で学ぶ。著書に『日本的ナルシシズムの罪』(新潮新書)、『荒野の精神医学』(遠見書房)。