「バナナ共和国」は本当に搾取的だったのか?

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2022.11.30
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Méndez-Chacón, E. and Van Patten, D. (2022) “Multinationals, Monopsony, and Local Development: Evidence from the United Fruit Company,” Econometrica, forthcoming.

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菊池信之介

はじめに

今日、学校や病院といった公的インフラは政府が提供する当たり前のサービスだと思われている。しかし、かつては政府ではなく企業が、それらのインフラを提供していたケースが多くある。たとえば、19 世紀にイギリスの農村で学校や病院を提供したのはユニリーバだったという (Watkins and Dalton 2019)。

本稿で紹介する論文では、地域経済が家族農業経営から企業労働制度へと移行する過程で、大企業がどのような役割を果たすかについて、歴史における自然実験を用いて分析している。具体的には、20 世紀最大の多国籍企業の 1 つである、United Fruit Company (以下 UFCo) がコスタリカで用地取得した地域の住民にどのような影響を与えたかについて、詳細に考察している。

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