(第2回)日本と世界の子どものこころのケア

紛争・災害と子どものこころのケア――世界の精神保健の現場から(田中英三郎)| 2022.11.02
2022年ロシアによるウクライナ侵攻は日本に住む私たちにも大きな衝撃を与えました。また、新型コロナウイルスのパンデミックや自然災害など、私たちの日常を一変させる出来事がいつやってくるかは予想もつきません。こういった出来事はすべての人々のこころに暗い影を落としますが、特に子どものこころへの影響は計り知れません。この連載では、世界と日本の現場から、子どもたちのこころの健康を保つためにどんなことがされているのか、レポートしていきます。

(毎月上旬更新予定)

前回は「生と死の境目(トラウマ体験)が私たちの日常と隣り合わせにある」ということをお話ししました。さて、この事実は子どもたちにも当てはまるのでしょうか。

今回は「子どものトラウマ」をテーマに扱った天童荒太氏の小説『永遠の仔』(幻冬舎、1999)を紹介するところからはじめます。この物語には、虐待を受けた3人の少年少女が登場します。彼ら彼女らは児童虐待のためにこころを病み、四国にある児童精神科病院で一時期生活をともにしました。その後、成人し再会を果たしたところからこの物語ははじまり、さまざまな事件に巻き込まれていきます。

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田中英三郎(たなか・えいざぶろう)
2001年愛媛大学医学部を卒業、精神科医師。ユニバーシティカレッジロンドン(UCL)等で社会疫学を研究、公衆衛生学修士、博士(医学)。国立国際医療研究センター、国境なき医師団、都立梅ヶ丘病院、兵庫県こころのケアセンター等を経て、2021年よりJICAヨルダン事務所・ヨルダン保健省精神保健政策アドバイザーを務めている。